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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
「甲子園」はタイガースの本拠である阪神甲子園球場とは別物だと、江川卓さん(56)がスポーツ誌「ナンバー」で語っている。「春と夏だけ、神様が高校生のために甲子園という聖地を届けて下さる」と。「僕もそう思ってます」と応じたのは、対談相手の桑田真澄さん(43)である▼神々しさが極まるのが夏の決勝だ。3年続けてそのマウンドに立った桑田さんは「神様の声を聞いた」と言い、縁がなかった江川さんは「僕には何も言ってくれなかった」と笑う。神様は気まぐれだ▼聖地の空は、一戦ごとに盛夏のぎらつきを収め、柔和になる。秋めく甲子園で日大三(西東京)と光星学院(青森)が球譜に名を刻んだ。三高の豪打、恐るべし。疲れを見せぬ吉永投手にもしびれた▼片や光星。青森県出身者は少なくても、津波に襲われた八戸の期待を背に、「東北初」の夢をよくつないだ。親元を離れてでも聖地に足跡を残す。そんな個々の執念が、被災地の願いと一つになった▼大会の延長戦は最多記録に並ぶ8試合。満塁ホームランあり、サヨナラ劇ありの熱戦に奮い立った人も多かろう。そして決勝の両校には、残るべき理由があった。気まぐれに見えて、神様もなかなかやる▼節電による前倒しで、栄冠は昼前に輝いた。泥んこのユニホームや、揺れるアルプス席の残像を自分の力に転じるのに、週末の長い午後はあつらえ向きだ。野球の神様はいてもいなくてもいい。ただ聖地があってよかったと、特別な夏の終わりに思う。