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全国4014チームの戦いが幕を閉じた。東日本大震災から5カ月。それぞれの思いとともに迎えた93回目の全国高校野球選手権は、「あの夏の」と長く語られる記憶の一つとして人々の心に残ってゆくだろう[記事全文]
航空券の販売はインターネット。座席の間隔は狭く、食事はなし。乗務員は1人で二役、三役をこなす。こうして大手の半額といった低運賃を実現する。欧州や米国、さらにはアジアの空[記事全文]
全国4014チームの戦いが幕を閉じた。東日本大震災から5カ月。それぞれの思いとともに迎えた93回目の全国高校野球選手権は、「あの夏の」と長く語られる記憶の一つとして人々の心に残ってゆくだろう。
延長戦は大会最多タイ記録に達する八つを数えた。1点差で決着したのは16試合あり、サヨナラ試合は七つ。「最後まであきらめない」という選手たちの言葉をいつにも増して聞いた。
連日、入場券売り場に長い列ができた。その観客に変化があった。高野連によると「応援する学校の試合に間に合わない」といったクレームが例年に比べて大きく減った。目当てのチームの試合というより、高校野球そのものを楽しもうという人がふえたのか。震災後のどこか重苦しい空気のなかで、いちずな熱気に触れたいと引きつけるものがあったのだろう。
観客は15日間で84万8千人になった。昨年を4千人上回る。終戦記念日には、09年の球場改装後で最多となる累計8万2千人を記録した。
その「甲子園でプレーできる喜びがスタミナの源だった」。優勝した日大三(西東京)の吉永健太朗投手が言った。準優勝した光星学院は被災地・青森県八戸市からの出場だった。
頂点に立てた選手たち以外もこの夏の野球を楽しみ、力を得てくれただろうか。
宮城大会で優秀選手に選ばれた仙台商3年の菅田(すがた)直幸君は、高校で野球をやめると決めた。県代表にあと少しの準決勝で敗れた後は就職活動に取り組む。自動車学校にも通う。いまだに悔しくて、自分の試合の録画はもちろん、甲子園のテレビ中継もほとんど見なかった。
3月11日、母親の実家が津波で流され、伯父を亡くした。交通機関が止まり、自転車で1時間半かけて学校に通った。「野球と震災は別物。一生懸命プレーするしかない」と言い聞かせて、甲子園を目指した。
打てない苦しさや練習のつらさに比べればほかのことは、と今でも思える。「震災を経験した中で野球をやれたことは大きな自信になる。負けた悔しさをどこで返せばいいのか悩んだけど、負けて今の自分があるというOBの話を聞いて、野球で返さなくてもいいのかなと思えた。これからの人生で返せればいいと」。近い将来、育った仙台市若林区の少年チームで野球を教えたい。地元の復興にも携わるつもりだ。
甲子園の夏は終わった。若者たちは、それぞれに次に進む場所で力を伸ばすに違いない。
航空券の販売はインターネット。座席の間隔は狭く、食事はなし。乗務員は1人で二役、三役をこなす。こうして大手の半額といった低運賃を実現する。
欧州や米国、さらにはアジアの空で存在感を増す格安航空会社(LCC)が、日本でも身近な存在となりそうだ。
全日空はアジア最大手のLCCエアアジア(マレーシア)と組み、成田空港を拠点とするLCC新会社を立ち上げる。香港の投資会社との合弁で関西空港にも別会社を設立しており、東西で体制を整える。
日本航空も、LCC大手のジェットスターを持つ豪カンタスグループなどと新会社を作り、成田や関空を拠点に乗り出す。
日本へはすでに韓国、シンガポール、中国などアジア太平洋地域の6カ国、9社のLCCが就航している。ただ、首都圏以外の空港が中心だ。そこに日本の2大グループが成田を拠点に加わる影響は小さくない。
経済活性化のためにも、より多くの外国人に日本を訪ねてもらう重要性は、東日本大震災後ますます高まっている。私たちにとっても選択肢が増える。安全第一は当然として、LCCの増加を歓迎したい。
しかし国内にはコストダウンを難しくする壁がいくつもある。何より、高すぎる着陸料や航空機燃料税と、それを生み出した空港運営や航空行政だ。
成田、関空、中部を除く国管理の主要28空港では、滑走路は国、旅客ビルは民間企業や第三セクターと運営主体が別々で、ビルの収益を着陸料の引き下げに回すのが容易ではない。
着陸料や航空機燃料税は国の特別会計などを経て空港の建設や維持運営に回る。この硬直的な仕組みが、需要のさほど見込めない空港の建設につながり、自治体管理分も含めて98もの空港が乱立する現状を招いた。
国土交通省の有識者検討会は、滑走路とビルの一体運営、空港運営への民間の知恵と資金の導入を柱とする報告書をまとめた。一方、特別会計の空港整備勘定については、政府が昨年の事業仕分けで「将来的に廃止する」とした。
道路や港湾に比べ、空港分野への一般会計からの予算配分は手厚くなかった。空港運営の改革に加え、需要の乏しい地方空港の廃止を含む「選択と集中」を進めた上で、利用増が見込める空港の拡張を一般会計予算で支えてもよいのではないか。
より多くの人が飛行機に乗りやすくなるLCCの台頭を機に、利用者が主役となる空を広げたい。