HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47438 Content-Type: text/html ETag: "6ab2b-128b-3d7e6d80" Expires: Sat, 20 Aug 2011 01:21:43 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 20 Aug 2011 01:21:43 GMT Connection: close 8月20日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


現在位置は
です

本文です

8月20日付 編集手帳

 小学校の卒業を控えて、家族に宛てた手紙を先生が子供たちに書かせた。佐藤雄樹(ゆうき)君も書いたが、照れて家族に渡さない。「雄樹、あの手紙は?」何日もたって父親の和隆さんに問われ、「これ」と手渡したのは震災前日、3月10日の夜だったという◆震災の犠牲者16人が生前つづった家族への言葉を、『中央公論』9月号が特集している。作家長薗安浩さんの取材によるもので、雄樹君(宮城県石巻市、12歳)の手紙もそのなかにある◆お父さんへ――以下4行が全文である。〈12年間育ててくれてありがとうございました/言うことを聞かなくてめいわくかけて/きたけど、心の中では感謝していました/本当にありがとうございました ゆうきより〉◆和隆さんが「まるで遺書のような…」と語るように、過去形で書かれている。震災前夜ということも、過去形も偶然には違いないのだが、古人が言い習わしてきた「虫の知らせ」という言葉が脳裏をかすめぬでもない◆命の限りの(せみ)しぐれが聞く人の胸にしみ入る夏の終わりである。あるいは、命のはかなさを知るその虫の知らせであったか…と、ふと考える。

2011年8月20日01時29分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です