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新手のヤミ金融として拡大している「クレジットカードの現金化」を警視庁が摘発した。金を貸す側が一応は商品売買の形を装うため、これまで古物営業法違反や脱税など、からめ手からの摘発にとどまっていた[記事全文]
半世紀前に米国で生まれたインターネットは、いまや世界をつなぐ。日常生活に不可欠な存在になっている。便利さの一方で、政府や企業を標的にしたサイバー攻撃が頻発している。ソニ[記事全文]
新手のヤミ金融として拡大している「クレジットカードの現金化」を警視庁が摘発した。金を貸す側が一応は商品売買の形を装うため、これまで古物営業法違反や脱税など、からめ手からの摘発にとどまっていた。今回は高利の融資を禁じた出資法違反容疑で、この手口に初めて正面から迫った。
その仕組みは、例えばこんな具合だ。クレジットカードを持つ客が現金化業者からビー玉など安物の商品を50万円で買う。カード会社が立て替え払いを認めたら、現金化業者が35万円をキャッシュバックと称して客の銀行口座に振り込む。
客は当座の金を手にするが、購入した全額分を翌月以降、カード会社に払わなければならない。大きな差額は事実上の利息となり、年率に換算すると数百〜数千%という高利となる。
ネットオークションの隆盛で妥当な値段がいくらか相場観が失われているものがあるうえ、現金化業者が扱う品も相応の価値がある場合もあり、外見から違法だと断じにくい。
利用者側も、こんな使い方はカード契約に違反するために、露見すると解約と残る債務の一括返済を迫られる。そのため、被害届や相談も出にくい。
そして、カード会社の下請けのようにして加盟店を増やし、金銭のやりとりを仲介する決済代行会社の存在も実態を見えにくくしている。とくに海外のカード会社と契約した代行会社が間に入ると、問題業者の特定すらままならない。
カード業界は、この手口で不法に現金化されている金額の規模や業者の数すらつかんでいない。消費生活センターへの相談も1千件を超すが、氷山の一角とみられる。
カード業界を所管する経産省のほか金融庁、消費者庁、法務省などが対応を協議しているが決め手に欠ける。捜査と並行して知恵を絞り、実態をあぶり出して法の網をかぶせてほしい。
消費者庁の音頭で、決済代行会社の登録制度は始まった。ネット上に広がる現金化への誘いを抑えることも急務だ。カード業界も有害な業者を洗い出し、周知と警告を徹底すべきだ。
利用する側も、我が身のためにならないことを肝に銘じてほしい。借金が膨らむだけではない。自己破産を申し立ててもこのような現金化による借金があると、裁判所が債務の免責を認めなくなる恐れもある。
カードには決済で便利な面がたくさんある。だがこんな悪用が横行しては、制度を支えている信頼が崩れてしまう。
半世紀前に米国で生まれたインターネットは、いまや世界をつなぐ。日常生活に不可欠な存在になっている。
便利さの一方で、政府や企業を標的にしたサイバー攻撃が頻発している。ソニーの個人情報の大量流出も記憶に新しい。
こうしたなか、米国防総省はサイバー空間を「陸、海、空、宇宙空間」に並ぶ「第5の戦場」と位置づけた新戦略を発表した。「敵」として、外国政府、テロ組織、ハッカーなどを想定している。
新戦略は同盟国や企業との連携を深め、防護技術の開発やその人材育成に重点を置く。
同時に、深刻な攻撃に対しては、軍事的手段を用いた反撃も辞さない構えを示した。
サイバー攻撃の特徴は、技術さえあれば、遠くからでも低コストで瞬時にできることだ。
手法は高度化、巧妙化し、ウェブサイトを改ざんしたり、機密情報を盗んだりするだけでなく、発電所などの特定の制御システムだけを狙う新種のウイルスも登場している。
米国やロシア、中国などはすでに専従の軍事組織を設けている。破壊力の大きなサイバー戦争の可能性すらささやかれるようになっている。
ところが、サイバー空間の国際ルールは、まだほとんど確立していない。国の安全を根幹から覆すような脅威を、戦争として扱うのか、犯罪として扱うのかも決まっていない。
やっかいなことに、攻撃者の特定も難しい。やみくもに反撃すれば、多数の無関係な利用者を「誤爆」したり、巻き添えにしたりしかねない。
日本も2000年に8省庁のサイトが攻撃された。05年に内閣官房に専属の情報セキュリティセンターを設けて、警察や防衛などの関係省庁と対策を進め始めた。年次計画をつくり、企業の安全指導もするが、実態はほとんど知られていない。
欧米の研究開発予算が年々伸びているのとは逆に、日本ではこの5年で50%近く削られているのが実情だ。
今年の防衛白書は、サイバー空間の脅威を初めて特集した。日本政府として危機意識を持って、対処していく必要があるのは確かだろう。
むろん、日本がすべきことは「専守防衛」だ。高い技術力を集めて強固な監視や防護の基盤を築く。それをもとに各国と連携し、世界の牽引役(けんいんやく)になる。それくらいの気構えで国際ルールの確立に尽力してほしい。
それが、IT大国に求められる責務といえる。