風力発電などを全量買い取る再生エネルギー法案が成立の見通しとなった。原発に代わる電源の主役に育てるため、原子力関連予算を再生エネに回し、着実に「脱原発」へ踏み出すよう求めたい。
再生エネ法案は国民生活に密着しており、妥協せざるを得なかったのだろう。民主、自民、公明三党が、普及を妨げないよう「買い取り価格は第三者委員会が決める」などの修正で合意した。
原発が失った電力を補いたいが、現在の再生エネは力不足が否めない。二〇二〇年の総発電量に占める割合は現在の約9%から13%程度にしか増えそうにない。菅直人首相が表明した20%との差が大きすぎる。
電力会社が全量買い取って電気料金に上乗せし家庭や企業などが負担するので、価格が高いと負担が重くなり、低いと太陽光発電などに投じた費用の回収期間が長くなって普及を妨げかねない。電力料金への転嫁には限界もある。
政府は震災前のエネルギー基本計画で三〇年に原発の割合を現在の約三割から五割以上に高める目標を掲げた。原発は二酸化炭素を出さないため「安全でクリーン」とはやし、再生エネは同じクリーンでありながら脇役に甘んじた。
だが、今や原発は福島で放射性物質を大量にまき散らし、いよいよ新増設は住民の理解を得られなくなりつつある。現に福島県南相馬市は原発と一線を画し、立地対策費の辞退を打ち出した。
政府も新たなエネルギー政策の検討会議などで「基本計画を白紙から見直し、原発依存度を低減する」と表明せざるを得なくなっている。にもかかわらず、自治体への交付金や次世代原子炉の開発補助など、年間四千億〜五千億円に上る予算は計上されたままだ。
脱原発依存を宣言しながら、推進のための「アメ」は温存というのでは、無節操もはなはだしい。
「原発に頼らない社会」の実現には、まずは原子力関連予算の組み替えを断行し、再生エネの潜在力を引き出すことが求められる。財政面からも送電線の開放や大容量の蓄電池開発などを積極的に後押しし、早急に再生エネの普及を図るべきだ。
脱原発を宣言したドイツでは新たなエネルギー社会への挑戦が始まった。日本も再生エネを育て、元気な経済を取り戻したい。
民主党は政治主導を旗印に政権についた。予算組み替えは、らちが明かなかった政治主導を国民に示す格好の機会にもなるはずだ。
この記事を印刷する