HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 30720 Content-Type: text/html ETag: "6f1b92-5f41-17d8a680" Cache-Control: max-age=4 Expires: Thu, 18 Aug 2011 21:21:06 GMT Date: Thu, 18 Aug 2011 21:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
民主党代表選が27日告示、29日投開票で検討されている。26日に菅首相の「退陣3条件」が満たされ、首相が正式に辞任を表明するというシナリオだ。日程案を練る岡田克也幹事長[記事全文]
「誤解しないでください子ども手当存続します」民主党が作成した政策ビラが、与野党間に新たな火だねを持ち込んだ。自民党は「来年6月以降は子ども手当[記事全文]
民主党代表選が27日告示、29日投開票で検討されている。26日に菅首相の「退陣3条件」が満たされ、首相が正式に辞任を表明するというシナリオだ。
日程案を練る岡田克也幹事長が、政治空白を短くしたいという気持ちはわかる。確かに、東日本大震災からの本格復興のための第3次補正予算案や、来年度予算案づくりをこれ以上、遅らせることは許されない。
だが、民主党の代表選びは、首相選びだ。所属国会議員の投票で決めるにしても、わずか3日間で「次の首相」を決めるのは拙速に過ぎる。
日程の再考を強く求める。
民主党執行部には、昨年、鳩山前首相が政権を投げ出したときも、退陣表明の2日後には菅代表が誕生したという思いがあるのだろう。しかし、菅氏は当時、副総理であり、比較的、順当な継承といえた。
それに比べて、今回の代表選に意欲を示す顔ぶれには、世代交代をめざす中堅が多い。政治家としての力量も、政治理念ややりとげたい政策も、ほとんど知られていない。
さらに昨年より、新首相の責務は厳しく、重くなっている。
2代続けて挫折した民主党政権への失望感に加えて、震災という国難に際しても、政争に明け暮れる与野党に、国民はほとほとあきれている。新首相は、こんな政治への信頼を回復する先頭に立たなければならない。
その上で、震災復興や原発事故を受けたエネルギー政策の大転換を担うのだ。
これほどの重い使命を果たせる政治家なのかどうか。民主党は有権者に示す責任がある。
そのためには、候補者同士が公開討論を重ね、公約の中身を確かめ合う作業が欠かせない。そのやりとりへの有権者の反応を、民主党議員は地元や関係者から聞いた方がいい。
それには最低でも1週間程度の論戦は必要だろう。そうなると、国会での首相指名選挙は8月末までの今国会中には終わらないが、それでもとくに問題はあるまい。9月早々に臨時国会を召集すれば済む話だ。
この2年間の政権党としての民主党を振り返れば、拙速が禍根を残すのは見えている。
たとえば、3次補正の財源を賄う増税には、民主党内に強い異論がある。議論を尽くさなければ、後で蒸し返され、党内での足の引っ張り合いが続くだけだ。エネルギー政策もマニフェストの見直しもしかりである。
新代表の政策で党がまとまるために、代表選での政策論争にもっと時間をかけるべきだ。
「誤解しないでください 子ども手当 存続します」
民主党が作成した政策ビラが、与野党間に新たな火だねを持ち込んだ。
自民党は「来年6月以降は子ども手当を廃止して、所得制限をつけた児童手当に戻す」と解釈しており、「うそつき」と猛反発。民主党の岡田幹事長が陳謝した。
玉虫色とはいえ、与野党で合意が成立したばかり。しかも、国会が正常化へ動き出した矢先に、なぜ対立をあおるビラをつくるのか。理解に苦しむ。
そもそも、民主党にとって守るべきは「子ども手当存続」というメンツなのだろうか。
与野党の協議では所得制限の導入が焦点だった。民主党はここを譲り、「夫婦の収入の多い方で年収960万円程度」での線引きで合意した。
制限の対象になるのは、子育て世帯の1割ほど。この世帯への目配りこそ大切だろう。
いま、日本の出生率が回復傾向にあるのは、団塊ジュニア世代を含む35〜44歳の母親の産む数が増えているからだ。晩婚・晩産化で所得が高くなり、制限の対象内に入りやすくなる。
この所得層は自公政権下の児童手当も受け取れず、「子育てで何もサポートされていないという感覚が強かった」と、ワークライフバランスに詳しい東レ経営研究所研究部長の渥美由喜(なおき)さん(43)は指摘する。
仕事は大変、税金はたくさん払う。なのに保育料は所得に応じて決まるので、高い。「子育てしながら、がんばって働くのは悪いことのように感じる」という恨み節さえ出るゆえんだ。
所得制限なしの子ども手当は、この層に「がんばりを認めてもらえた」という感覚を与えたろう。その意義は金額以上に大きかったのではないか。
支給対象を見直すのはやむを得ないが、「所得に関係なく、子育て世帯は社会から応援されている」というメッセージを明確にする政策が必要だ。
子ども手当の代わりに扶養控除が廃止されていたことで税負担が重くなる世帯に、緩和措置を講じるのは当然だ。認可保育園の入所が後回しにされたり、保育料が重くなったりすることへの不満にも対応して欲しい。
スウェーデンでは児童手当に所得制限がなく、育児休業中の給付は、所得に比例する。それが女性の働く意欲につながる。
男女ともに能力を生かして働きながら、子育てをする。それを社会が応援する。その認識の共有が、子ども手当の看板より大切なはずだ。