新興国市場への進出や超円高を背景に鉄鋼や電機メーカー間で経営や事業を統合する動きが活発化してきた。海外企業を買収する動きも目立つ。技術力を生かし世界市場で存在感を示してほしい。
今月初めに報じられた総合電機最大手の日立製作所と造船・重機械トップの三菱重工業との大合併構想は、真夏の夜の夢と消えたようだ。実現すればトヨタ自動車に次ぐ巨大企業誕生だったが期待感が強すぎた。
だが両社は製鉄機械や海外での鉄道システムで提携済みだ。最近も三菱電機との三社で水力発電事業での新会社設立を発表した。将来の経営統合の余地は残る。
今年二月、鉄鋼最大手の新日本製鉄は住友金属工業と来年十月をめどに合併すると発表した。円高や原材料価格の高騰対策、海外生産の検討などが狙いである。
デジタルカメラではリコーがHOYAの「ペンタックス」事業を十月に買収する計画だ。産業界の相次ぐ再編の波は、各社が生き残りに必死なことを物語る。
日本企業にとって新興国はいまや最重要市場となっている。今年の通商白書はアジア新興国のインフラ(社会基盤)投資は二〇二〇年までに約八兆ドルに達するとし積極受注を呼び掛けたほどだ。
こうした状況下で一ドル=七〇円台という超円高相場が出現した。長期化すれば輸出企業の業績は悪化し海外移転も加速する。国内の景気と雇用の悪化を防ぐには、政府は円高対策を急ぐべきだ。
一方、円高をチャンスと捉えるところもある。武田薬品工業はスイスの大手製薬会社を約一兆一千億円で買収した。新興国市場での販売強化が狙いという。
国内を見れば東日本大震災と原発事故の影響は依然大きい。どの企業も破壊された工場の再建やサプライチェーン(部品の調達・供給網)復旧、電力不足、風評被害対策など難題を抱える。
戦後、日本企業は二度の石油ショックやバブル崩壊、リーマン・ショックなど何度も困難を克服してきた。今度も自らの力で乗り切らなければならない。
カギは培ってきた技術力の活用だ。価格競争力の強い製品、たとえばハイブリッドカーやデジタルカメラなど世界市場をリードする製品をもっと増やすことだ。
そして国籍や性別などを問わず多様な人材を積極的に採用する。長期雇用で従業員の士気を引き出し企業の活力を高めれば、企業百年の成長戦略が描けるはずだ。
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