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天声人語

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2011年8月18日(木)付

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 私見だが「サラリーマン」という言葉はあまり良い意味では使われない。我々も時折、「近ごろの記者はサラリーマン化したねぇ」などとチクリと刺される。サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ……という流行歌もあった▼サラリーの語は、ローマ時代の兵士に与えられた「塩を買うための報酬」に由来する。貴重だったらしく、中世英国では家に塩の貯蔵庫のあることが貴族の自慢だったという。人は塩なしに生きられない。そして猛暑の夏、「塩入り」の食べ物、飲み物に人々の手が伸びている▼熱中症でこれまでに、全国で約3万5千人が救急搬送された。予防意識の高まりが「塩人気」を生み、ある飲料メーカーの塩サイダーは発売1カ月で年間目標を超えた。スーパーの棚には各種の塩(しお)飴(あめ)がずらりと並ぶ▼〈ことごとく死にゆく輩(やから)と思へども死にさうもなき一人二人(ひとりふたり)ゐる〉。島田修二さんのユーモラスな一首だが、死にそうもない頑健者が病むのを「鬼の霍乱(かくらん)」と言う。霍乱とは熱中症や食あたりをさすそうだから、暑気は侮れない▼その暑さも明日あたりから一段落らしい。列島の天気予報は久々に傘のマークが連なっている。雨のあと、高い天に刷(は)いたような雲が浮けば、夏と秋がすれ違う「ゆきあいの空」となる▼とはいえバテが出る頃だけに、盆明けの電車に揺られるサラリーマンも楽ではない。生身の体をかばいつつ秋を待ちたい。もうひと辛抱か、ふた辛抱か。残暑の酷ならざるを、お天道様に願いながら。

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