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2011年8月16日(火)付

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原子力安全庁―独立性の確保が課題

原子力発電所に対する新たな規制を担う「原子力安全庁」を、環境省の外局として設ける政府の方針が決まった。内閣府の所属とする案もあったが、原子力規制行政と環境行政には共通性[記事全文]

シリア危機―国際的な民主化圧力を

中東のシリアで民主化を求めるデモに対し、政府が弾圧を激化させている。先週末、デモが激しい町に戦車と軍艦を送り、住宅地を砲撃したという。シリアといえば、サッカー・ワールド[記事全文]

原子力安全庁―独立性の確保が課題

 原子力発電所に対する新たな規制を担う「原子力安全庁」を、環境省の外局として設ける政府の方針が決まった。

 内閣府の所属とする案もあったが、原子力規制行政と環境行政には共通性があること、役割が多く責任が分散しがちな内閣府より、環境省の方が新組織をつくる手続き面で対応しやすいことなどが決め手となった。

 環境省が原発規制の元締となることには、二つの意味がある。一つは、国策としての原発推進の終わりだ。

 日本の原子力は、旧通産省と旧科学技術庁が引っ張ってきた。2001年の省庁再編後も、この後継省庁が規制の主役を担うことになった。

 民間の力が増した時代になっても、強力なエンジンを政府が抱え続け、監視役も同系列の役所にまかせる。それが産官学の原子力村を生み、安全策の甘さにつながった。

 これを白紙に戻し、環境保護を基本政策とする役所に明け渡す。原子力を推進の対象から規制の対象へと転換する第一歩としなければならない。

 もう一つは、原発を支えてきた安全神話の終わりだ。

 原子力を環境行政の対象とする視点は、事故を起こせば環境を大きく破壊する技術だと認めることにほかならない。

 今後の規制は、こうした新しい発想に立つ必要がある。福島第一原発に近い地域で進められる除染作業はもちろん、平常時でも放射線量に目を光らせ、できる限り抑える対策に力を注ぐことだ。

 閣議では名称を「安全庁」ではなく「規制庁」とすべきだ、との意見も出たという。

 新たな組織が過去の行政とは異なる役割を担うことを明確に示す意味で、賛成したい。

 新庁の課題はなにより、独立性の確保だ。

 省庁間の権益争いが激しい霞が関の中で、環境省は相対的に力が弱いのも事実だ。いざというときに政治や他の官庁の圧力をはねのけて安全の見地からモノを言う強い意志と権限をどこまで持てるのか。

 いったん事故が発生すれば対処方針を示し、他省庁を束ねて素早く動かすことが求められる。刻々と変わる事態を把握し国内外に的確に情報公開する機能も重要だ。危機の際に官邸とはどう連携するのか。

 細かい点は月内にも立ち上がる準備室の作業となる。安全規制そのものの抜本的な見直しも急がなければならない。新たな枠組みづくりに向け、山積する論点を着実に詰めて欲しい。

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シリア危機―国際的な民主化圧力を

 中東のシリアで民主化を求めるデモに対し、政府が弾圧を激化させている。先週末、デモが激しい町に戦車と軍艦を送り、住宅地を砲撃したという。

 シリアといえば、サッカー・ワールドカップ予選で日本と同じ組になった国として知る人もいるだろう。だがここは、アサド現大統領の父の時代から2代40年にわたって、過酷な強権体制が続いている国でもある。

 3月にエジプトのムバラク政権の崩壊など、「アラブの春」に連動してデモが始まった。それからの市民の死者は2千人になる。最近は度を越した弾圧が続く。国連安全保障理事会は今月、「あらゆる暴力の停止」を求める議長声明を出した。

 しかし安保理の対応は、不十分で及び腰だと言わざるを得ない。市民保護を掲げて軍事介入まで踏み込んだリビアへの対応と比べれば、その差は歴然としている。

 安保理では英仏主導で非難決議を出す動きがあるが、シリアと関係が深いロシアや中国が反対している。議長声明が安保理の初めての共同歩調である。

 シリアの行く末に、国際社会は慎重にならざるを得ない事情がある。この国はイスラエルに接し、中東和平の鍵を握る。不安定な状況が続くイラクやレバノンとも国境を接する。

 そして少数派のイスラム教アラウィ派が支配する国であり、体制が崩壊すれば大規模な難民発生など混乱が起きかねない。

 シリア危機の収拾は、民主化の実現によるしかない。アサド政権は複数政党制の導入などを約束しているが、何も実現していない。一方で、デモ隊に対する武力行使を拡大している。

 アサド政権が国民の民主化要求を力で押さえ込めると考えるなら、大きな思い違いである。政治危機はさらに深まり、政権は正当性を失って自壊の道をたどるだろう。だが、それまでの市民の犠牲を放置できない。

 民主化を迫るため、国際社会は安保理決議に基づくシリア政府や、政権幹部の資産凍結や渡航禁止などの経済制裁を始めるべきだ。民主化勢力への支援態勢をとることも必要だ。

 欧州主要国はすでに大使を召還している。アラブ連盟も「民間人への武力行使の即時停止」を求める声明を出した。その後、サウジアラビアやクウェートなどが大使召還を発表した。

 日本政府はシリアの主要な支援国である。外相談話でシリアのデモ弾圧を非難しているが、アラブ諸国でもシリア批判が高まる今、大使召還など次の動きをとる時期が来ている。

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