HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47771 Content-Type: text/html ETag: "f42aa-12bc-6451d4c0" Expires: Fri, 12 Aug 2011 20:21:28 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 12 Aug 2011 20:21:28 GMT Connection: close 8月13日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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8月13日付 編集手帳

 短歌では石川啄木に〈よごれたる手をみる――/ちやうど/この頃の自分の心に(むか)ふがごとし〉がある。俳句では尾崎放哉に〈(さび)しいぞ一人五本のゆびを(ひら)いて見る〉がある◆おのが心の奥を見つめようとするとき、人は無意識のうちに手のひらを眺めるのかも知れない。「アンパンマン」の漫画家やなせたかしさん(92)の場合も、そうであったらしい。やなせさんの作詞した歌『手のひらを太陽に』(作曲・いずみたく)が生まれて、今年で50年になる◆季刊『詩とファンタジー』(かまくら春秋社)の最新号で当時を回想している◆漫画の注文もない不遇の時代に、深夜の仕事場で何となく懐中電灯で手を照らしていて浮かんだ詩句という。ぼくらはみんな 生きている/生きているから かなしいんだ…その歌はいま、被災地で歌われ、傷ついた子供たちの心を元気づけている。〈自分が一番元気の無かった時に作った歌が『手のひらを太陽に』だったのに〉〈人生というのは予測できない〉とある◆震災から5か月がすぎた。過酷な運命に翻弄されて、どれほどの数の人が自分の手をじっと見つめただろう。

2011年8月13日01時27分  読売新聞)

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