「更迭」という言葉を広辞苑で引くと、「役目や職などについている人がかわること、また、かえること」とある。ニュース用語としては、普通は後者の意味で使われる▼福島第一原発事故を受け、経済産業省の松永和夫事務次官、細野哲弘資源エネルギー庁長官、寺坂信昭原子力安全・保安院長が「更迭」されるというニュースがあったのはつい先週のことだ▼驚くことに、三人の退職金は一千二百万円ほど上積みされるという。「組織上の都合」で退職を求めるため、勧奨退職の対象になるためだ。更迭した官僚への対応として国民の理解は得られまい▼「人事を刷新しなければいけないことは一カ月前から考えていた。私がこの時期に判断した」。海江田万里経産相は、記者会見で「人事権者は私」と大見えを切り「更迭劇」を強調したばかり。あれは何だったのだろう▼後任の人事は「刷新」からは遠い年功序列の順送りだった。官僚のお膳立てした既定路線の人事を「更迭」と見立て、菅直人首相と海江田経産相が手柄争いを繰り広げたというのが真相のようだ。ほとぼりが冷めれば、三人は天下りするのだろう▼原発事故で故郷を追われ、避難生活を続ける福島の人たちにとって、退職金の上積みなど「泥棒に追い銭」ではないのか。海江田さん。心に「忍」の文字を抱いて泣いているのは、福島の人たちですよ。