HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19675 Content-Type: text/html ETag: "ba44dd-4770-1567b180" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 12 Aug 2011 20:21:24 GMT Date: Fri, 12 Aug 2011 20:21:19 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年8月13日(土)付

印刷

 むろん笑話のたぐいだが、謹厳なイギリス人は夏至を「昼間が一番長い日」と言い、フランス人なら「夜が一番短い日」と言うそうだ。同じものを見ても感じ方が違う。先の小欄で通勤電車の苦痛を書いたら、そんなジョークを思い出す便りを頂いた▼島根県の林秀子さん(63)が住む地方の鉄道は乗客が少ない。あるとき乗ったら、1両だけの車内は自分ひとり。途中で2人乗ってきたが、その後は乗り降りもなく、運転士の「よし」「よし」という確認の声だけが寂しく響いていたそうだ▼「満員電車の皆様からすれば(がら空〈す〉き列車は)贅沢(ぜいたく)な悩み? こちらからすれば満員電車なんて贅沢な悩み?」――。手紙は過疎と過密の不均衡を簡潔に突いていて、考えさせられた▼地方からの人口流出は今も続き、総務省によれば、今年3月末の東京、名古屋、関西の三大都市圏の人口は過去最高となった。1億2623万人の51%が居住している。片や、39の道府県では人口は減っている▼今では信じがたいが、明治半ばの人口最多は新潟県だった。米どころの地力だろう。だが、その後の工業化で太平洋側の都市が膨らみ続ける。戦後の66年を歩んでいま、過疎の地の現状はいっそう厳しい▼「わたしたちは前へ前へと走りすぎました。(故郷を)振り返ってみるとすばらしいものがあるのに」と手紙は続いていた。道路や鉄道は「帰りなんいざ」の帰省ラッシュ。都市と地方が互いに思う「贅沢」を、うまく中和させる妙手はないか。

PR情報