HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47644 Content-Type: text/html ETag: "f4deb-12ba-4178b7c0" Expires: Fri, 12 Aug 2011 00:21:45 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 12 Aug 2011 00:21:45 GMT Connection: close 8月12日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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8月12日付 編集手帳

 歌舞伎の八代目市川中車が敬愛する六代目尾上菊五郎に教えを乞うた。役者が舞台で泣くときは本当に涙を流すべきでしょうか? 劇作家の宇野信夫氏が随筆に書いている◆馬鹿なことを聞いちゃいけない――六代目は言下にたしなめたという。「役者は客席に背中を向けているときは、ベロを出していても客を泣かせなけりやァいけない」と。名優とうたわれた人にして言える言葉だろう◆世間には名優でもないのに真似(まね)をする人がいる。「被災者と心の絆を」などと背中で泣いて見せながら、ベロが客席に見えてしまう騒動がつづいた◆京都の「送り火」騒ぎは被災地の(まき)を受け入れることで収まりがついたようだが、岩手県産米に信じがたいテロップを付けて放送した東海テレビの「セシウムさん」騒ぎは、ついに番組の打ち切りに発展したという。口と腹は一緒でなければならぬ、などと綺麗(きれい)事を言うつもりはないが、大根役者の多いことよ◆下手くそな相手役と組んだとき、六代目は愚痴ったという。「とうとう、あいつに殺されちまった」。まじめに番組をつくってきたほかのスタッフも同じ心境だろう。

2011年8月12日01時25分  読売新聞)

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