HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 49215 Content-Type: text/html ETag: "ae8ac-165d-eb254a00" Expires: Tue, 09 Aug 2011 22:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 09 Aug 2011 22:21:10 GMT Connection: close 核燃サイクル 無責任な首相の政策見直し論 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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核燃サイクル 無責任な首相の政策見直し論(8月10日付・読売社説)

 トラブル続きで運転停止中の高速増殖炉「もんじゅ」について、菅首相が衆院予算委員会で、廃炉を含めて検討する、との意向を示した。

 原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理を含め、日本がエネルギー政策の柱と位置づけてきた「核燃料サイクル」路線も、根本から見直すという。

 民主党は2009年にまとめた政策集で「再処理技術の確立」を掲げ、核燃料サイクルを支持してきた。それ以降、今日まで、この問題が党内で本格的に論議された形跡はない。

 自ら主張する「脱原発依存」の延長にあるとの認識だろうが、退陣を表明した首相が、場当たり的に口にしていい問題だろうか。

 核燃料サイクルは、ウラン資源の有効活用を目指している。

 使用済み核燃料は再処理し、燃え残りのウランや燃料に使えるプルトニウムを回収する。高速増殖炉では、燃えないウランをプルトニウムに変換して使う。

 新たな核燃料を生産でき、長期的に「準国産エネルギー源」を得るのに等しい、とされてきた。これを放棄して他に本格エネルギー源を見つけるのは困難だろう。

 青森県六ヶ所村では、日本原燃の再処理工場が建設中だ。福井県敦賀市にあるもんじゅは、2050年の実用化をにらんだ開発拠点に位置づけられている。

 政策転換で、これらの施設が凍結・廃止になれば、六ヶ所村の工場では、運び込まれた使用済み核燃料約3000トンの処理が宙に浮く。全国の原発に保管中の使用済み核燃料も行き場がなくなる。

 ただ、再処理工場は最終工程でトラブルが続き、稼働には至っていない。もんじゅも、1995年のナトリウム漏れ事故以来ほとんど運転できていない。それぞれ2兆円、1兆円の巨費が投じられていることにも批判がある。

 しかし、短絡的な廃止では、この投資が全て無駄になる。

 近隣国に目を転じれば、原子力は一層、存在感を増している。

 中国は先月から高速増殖炉の発電運転を開始した。韓国は、日本と同じく再処理を始める、との方針を示している。北朝鮮は、核兵器開発に固執している。

 日本は、平和利用を前提に、核兵器材料にもなるプルトニウムの活用を国際的に認められ、高水準の原子力技術を保持してきた。これが、潜在的な核抑止力としても機能している。

 首相の無責任な言動には、こうした配慮がうかがえない。

2011年8月10日01時18分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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