HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47815 Content-Type: text/html ETag: "f1916-1250-fa1b3ec0" Expires: Wed, 10 Aug 2011 03:22:16 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 10 Aug 2011 03:22:16 GMT Connection: close 8月10日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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8月10日付 編集手帳

 貯金箱に5円玉を6個見つけた。それが有り金のすべてであったという。前田武彦さんは放送作家の駆け出し時代を自著で回想している。NHKでテレビの本放送が始まった1953年(昭和28年)のことである◆結婚して間もない前田さんは、その30円を携えて夫人と食事に出かけた。あんパン1個と20個入りのキャラメルひと箱を買い、半分ずつ分け合って食べたと、『マエタケのテレビ半生記』(いそっぷ社)に書いている◆前田さんが82歳で亡くなった。『夜のヒットスタジオ』や『笑点』の、軽妙さのなかに大人の匂いが漂う名司会ぶりはことに忘れがたい◆生まれたばかりのテレビと青春を共にし、地上波のアナログ放送が終了して“地デジ”新時代が到来したのを見届けたように去っていく。「テレビの申し子」そのままの人であったろう◆食事の話にはつづきがある。キャラメルを()んだ前田さんの奥歯から金冠が取れた。質屋に駆けつけると、いい値で引き取ってくれた。夫人の記した家計簿には〈収入=650円、(内訳)主人、歯〉とあるという。金はないのに、なぜだか楽しかった昔がある。

2011年8月10日01時22分  読売新聞)

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