HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 10 Aug 2011 02:09:16 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:詩人の吉野弘さんには、思わずはっとさせられる漢字遊びの詩が…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 詩人の吉野弘さんには、思わずはっとさせられる漢字遊びの詩がある。気を引き締められるのは、「『止』戯歌(ざれうた)」と題した一編だ▼<「正」は「一」と「止」から出来(でき)ています。信念の独走を「一度、思い止(とど)まる」のが 「正」ということでしょうか>。狭くなった視野を少し広げてごらんよ、という勧めに思える▼<正しさを振りかざす御仁(ごじん)ほど 自分を顧みようとする資質を欠いているようです。正義漢がふえると、揉(も)め事もふえるのは そのためです>。実は、正義ほど厄介なものはないんだよ、という詩人の心のつぶやきが聞こえるような気がする▼今年も広島、長崎の原爆忌が過ぎ、六十六回目の八月十五日を迎える。真夏の太陽の下、背筋を伸ばして「玉音放送」に聞き入った人たちは少なくなり、戦争体験という「背骨」を持たない私たち世代の平和の誓いは、どこか抽象的で頼りない▼七十年前、米国との戦争になだれ込んだ時、開戦に反対する良識的な声は「正義の戦争」を叫ぶ声の前に圧殺された。少数意見を尊ぶことの意味を、三百十万人に上る犠牲と引き換えに学んだはずの私たちは再び、「敗戦」の真っただ中にいる▼<自我を折ることが出来て 初めて祈ることが出来る>(「折と祈」)と吉野さんは書いた。八月ジャーナリズムとやゆされてもいい。鎮魂の夏、祈りのこもった記事を届けたい。

 

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