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2011年8月10日(水)付

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一票の格差―衆参両院とも早く是正を

 いまの国会の最優先課題は、東日本大震災からの復旧・復興に違いない。しかし、なおざりにされては困る宿題がある。

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 司法から再三、憲法違反だと指摘されている衆参両院の「一票の格差」の是正である。

 参院では、ようやく主な政党の改革案が出そろった。それぞれの案の隔たりは大きいが、各党はこのまま再来年の参院選に臨むことは許されぬという現実を見すえ、速やかに成案を得ねばならない。

■小手先では駄目だ

 昨夏の参院選の一票の格差は最大で5倍あった。これに対し、東京、高松、福岡の3高裁が「違憲」と断じ、他の12の判決が「違憲状態」とした。最高裁の判断はこれからだが、一連の司法の指摘は重く厳しい。

 そもそも、格差が最大4.86倍だった前々回の参院選を、最高裁は2009年、「違憲とは言えない」としつつも、国会に早期是正を求めていたのだ。

 改革案のうち、選挙区と比例区の組み合わせという現行制度の基本を維持するのが民主、自民の2大政党だ。

 民主案は長野と山梨、鳥取と島根といった隣接する2選挙区を統合する合区を五つ設ける。自民案は神奈川、大阪など4選挙区で定数を2増やし、新潟や京都など6選挙区で2減らす。

 しかし、これでは根本的な格差の是正にはならない。

 最高裁判決が指摘した通り、現行制度を前提にする限り、格差の縮小には限界がある。もはや都道府県単位の選挙区は大胆に見直さざるをえない。

 

■参院は「人」重視で

 抜本改革にあたっては、衆院との役割分担を踏まえ、衆院とは異なる考え方で代表を選ぶという視点が欠かせない。

 いまは衆参両院とも選挙区と比例代表があり、参院が衆院の落選者の受け皿のようにもなっている。そして二院制を採用する諸外国に比べて、日本の参院は権限が強い。「ねじれ国会」が政治の機能不全を招くのも、「強すぎる参院」が一因だ。

 こうした両院の関係を根幹から規定し直していけば、参院は一票の価値にこだわらない選び方を採用する方法だってあり得る。だが、そのためには憲法改正が必要になる。

 ここは選挙制度や運用の改善など、できるところから改革していくのが現実的だ。

 政権の枠組みを決める衆院選が、基本的に政党を選ぶ選挙になるのだから、参院選は思い切って「人を選ぶ」ことを主眼にしたらいい。原発問題など、政党の枠組みを超えた政策課題が増えるなか、国民の多様な価値観を柔軟に反映することにもつながるだろう。

 公明党案や西岡議長案のように、比例区を廃止し、ブロック単位の大選挙区制にすれば、同じ党の中でも複数の候補者から選べる。さらに無所属でも立候補しやすくなる。人を重視する選び方として優れており、有力な検討対象になる。

 定数削減も必須だ。復興増税や社会保障改革で、国民の負担増が避けられないときに、政治が身を削らなければ、世論の支持は得られまい。米国の上院の定数は100である。一気にそこまで減らせなくとも、少数精鋭でいいはずだ。

■1人別枠廃止から

 格差是正は衆院でも必要だ。

 政権交代した一昨年の総選挙の一票の格差は最大2.30倍だった。最高裁はことし3月の判決で「違憲状態」として、「速やかに立法措置を講ずる必要がある」と注文をつけた。

 衆院議員の任期は再来年8月までだが、解散はいつあってもおかしくない。参院以上に対応を急がねばならない。

 焦点は、あらかじめ各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」の是非だ。人口の少ない県の住民の意思を国政に反映させる仕組みと説明され、法制化されている。だが、最高裁判決は「合理性を失った」として廃止を求めた。

 国勢調査を踏まえて区割りを見直す選挙区画定審議会も、この1人別枠の扱いがはっきりしないため、議論を中断している。今国会できっぱりと廃止を決め、区割り審の議論を再開させるべきだ。

 一票の価値の平等は、議員の信任の根幹にかかわる。格差是正は、もう待てない。

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