日米欧の先進七カ国(G7)が為替安定に緊密な協調行動をうたった緊急声明を出した。金融市場は円高と世界的な株安基調が続いている。日銀は必要があれば一段の金融緩和に踏み切るべきだ。
週明けの東京市場は緊張感に包まれた。先週末に米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が史上初めて米国債の格付けを一段階引き下げ、ドルに対する信認を市場がどう評価するか、注目を集めていたためだ。
一部には、ドル急落(すなわち円急伸)が株価暴落を引き起こすのではないか、という懸念も出ていた。ふたを開けてみると、円は小幅高にとどまり、株価もアジア市場を含めて下落したが暴落は避けられた。
G7の中には、日本が先週、単独で実施した円売りドル買い介入に批判的な空気もあった。
ところが、米国債格下げという新たな事態を受けて「放置すれば世界の金融市場が大きく動揺しかねない」という警戒感が各国に強まり、一転して「必要とあらば協調介入も辞さない」姿勢を声明に強くにじませた。
金融市場は声明をみて、ひとまず様子見している格好だ。だが、これでひと山越えたとは言えない。米国と欧州の基本的問題が片付いていないからだ。
米国は景気の先行き不透明感が強まっている。家計は相変わらず住宅ローンの重圧に苦しみ、雇用も思わしくない。個人消費は伸び悩んでいる。だからといって、財政が大盤振る舞いできるかといえば、もはや余裕はない。
欧州も景気がいまひとつだが、財政危機はギリシャの後、ポルトガルやアイルランド、スペインなどに飛び火している。
円高が進んだのは、もともとドルとユーロに下落する地合いがあったうえ、米欧に比べて日銀は十分に金融緩和していないからだ。その結果、円が相対的に希少になって価値が上がっている。
日銀は先週、政府の単独介入に合わせて資産買い取り基金を増額したが、単に「基金枠」を増やしただけでは金融緩和にならない。実際に民間部門の資産を買って、市中に出回る日銀券の量を増やすことが重要だ。
ドル買い介入で市場に放出した円資金を日銀が吸収しない「非不胎化」措置も有効だろう。円高がさらに進むようなら、日銀は国債の買い切り増額など一段と実効性ある緩和策が必要になる。なにもしなければ日本の独り負けだ。
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