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福島第一原発の事故を受けて政府が検討していた、原子力規制機関の再編に向けた試案が示された。経済産業省から原子力安全・保安院を切り離し、内閣府の原子力安全委員会や文部科学[記事全文]
今年も甲子園の夏がやって来た。第93回全国高校野球選手権大会の代表49校のドラマを、最後まで見届けたい。地方大会を見ると、開催すら危ぶまれた東日本に限らず、震災の影響が[記事全文]
福島第一原発の事故を受けて政府が検討していた、原子力規制機関の再編に向けた試案が示された。
経済産業省から原子力安全・保安院を切り離し、内閣府の原子力安全委員会や文部科学省内の原子力関連業務などと統合して「原子力安全庁(仮称)」を新設する。
原発を推進する立場にあった経済産業省内に、規制機関の保安院があったこと自体がおかしかった。原発立地などの住民説明会に際し、推進側の発言者を確保するよう電力会社に依頼していた事実も判明した。分離は当然の判断だ。
ただ、新たな所属先については、環境省か内閣府か、閣内の調整がつかず試案では両論併記となった。よりふさわしいのはどちらか。それぞれに一長一短がある。
大事なのは、新しい原子力行政の中で、新庁の役割と位置づけを明確化することだ。
国策として原発を推進している中では、規制機関は原発の新設・稼働にお墨付きを与える存在にすぎなかった。
しかし、政府は原発への依存度を減らしていく方針を明確にしている。新庁は、原発の段階的な削減に向けて、新たな機能を果たさなければならない。
すでに私たちは、老朽化した原子炉や大地震などへの備えに不安が拭えない原発から廃炉にしていくよう提言している。そうした高リスク原発の「仕分け作業」を、新たな組織が担っていく必要がある。
また、原子力安全委には首相を通じて関係省庁に勧告できる強い権限があった。新しい態勢で、こうした独立性や機能をどう担保するかも、議論を尽くしてほしい。
組織づくりとともに大事なのは「人」の問題だ。
新庁の大半の職員はまず、元の組織からの横滑りとなる。古巣を向いたまま仕事をするようなことにならないよう、職員全体の意識改革をはからなければならない。
役所の慣例となっている内部昇格主義を改める。民間からの登用も含めて各部署の要所に新しい人材を入れる。
新しい役割に向かって仕事をすることが評価の対象となり、一人ひとりが責任感とやる気をもてる人事管理体系をつくる必要がある。
エネルギー政策を抜本改革するには、経産省や資源エネルギー庁自体の見直しにも踏み込まなければならない。保安院の分離と新庁の創設はその第一歩であることを忘れないでほしい。
今年も甲子園の夏がやって来た。第93回全国高校野球選手権大会の代表49校のドラマを、最後まで見届けたい。
地方大会を見ると、開催すら危ぶまれた東日本に限らず、震災の影響が全国に及んでいることを改めて思い知らされた。
家族や親類が津波の犠牲になり、家を流された選手がいた。転校してプレーを続けた選手もいれば、野球そのものを断念した選手もいた。福島第一原発近くの3校は、連合チームをつくって福島大会に出場した。
被災したチームを練習試合に招き、野球用具を被災校に送る取り組みが全国に広がった。地方大会に参加できなかった高校生の思いや、多くの人の努力があって迎える甲子園であることをかみしめたい。
被害の大きかった宮城県では地方大会に77校が参加した。9年ぶりの公立校対決となった決勝で初出場を決めたのは古川工だ。内陸部の大崎市で津波には遭わなかったが、練習中に震度6強の揺れに見舞われた。選手は地面に座り込んだ。すぐ脇で照明灯1基が倒れ、地割れが走った。春の県大会は中止に。夏の開催もはっきりせず、「なんで野球なんてしているのか」と選手が自分でわからなくなった時期もあったという。
練習を約1カ月中断し、ボランティア活動に通った。「一緒にがんばろう」という被災者の言葉にどれほど救われたか。今野晴貴(はるき)主将が振り返っている。
困難をハンディにするか奮い立たせる力にするか。それは自分次第だ。サッカーの日本女子代表(なでしこジャパン)が見せてくれたとおりだ。
でも、甲子園に集った選手たちは期待や重圧を背負い込みすぎず、ただ勝利を目指して力をふるってほしい。
学校によっては、被災地代表といった過度の期待や注目を集めるかもしれない。地方大会では「震災を言い訳にしてはいけない。注目されて負けてはいけない」と入れ込んで肩を痛めた投手がいた。ある監督は「震災を切り捨てることはできない。でも、震災のことをいろいろ聞かれてもつらい部分がある」と漏らした。余分な力を抜いて野球に集中すればいい。
震災を経て、多くの選手が野球を楽しむ幸せ、支えられてプレーできるありがたさを感じている。震災後の特別な夏だが、2011年の君の夏は一度きりだ。特別なことは必要ない。君のプレーが応援に応えるものであり、その姿は人の心に響く。
さあ、それぞれの甲子園を思い切り楽しもう。