HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19688 Content-Type: text/html ETag: "2125c6-477d-35244c80" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 06 Aug 2011 00:22:13 GMT Date: Sat, 06 Aug 2011 00:22:08 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年8月6日(土)付

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 80歳で亡くなった小松左京さんは戦時中、子ども向け雑誌で原子爆弾という新語を知った。夢物語のはずが、数年して日本に落とされる。「科学技術の発達はいったい人類をどないすんねんと思った。それもSFに本格的に取り組む一つの動機でした」と、小紙に語っている▼近刊『3・11の未来』(作品社)に寄せた絶筆で、その人は書いた。「私は、まだ人間の知性と日本人の情念を信じたい。この困難をどのように解決していくのか、もう少し生きていて見届けたい」▼小松さんは核兵器を憎みながら、科学技術の善用を信じ、原子力の活用を「人類の大きな挑戦」とみていた。それは、ごく一般的な立ち位置でもあった。3・11までは▼原爆と原発。似た音を持つ20世紀の発明は、ともに核分裂の熱を使う。一つは人殺しに、一つは発電に。しかし放射線は善悪を弁(わきま)えない。この猛獣を地震国で飼いならすのは難しいというのが、福島の教訓だ▼広島と長崎での追跡調査は、被曝(ひばく)には「これ以下なら安全」という量はないと教えている。国会で説明した児玉龍彦・東大教授によれば、福島からは広島原爆20個分(ウラン換算)の放射性物質が飛散した。残存量もはるかに多く、影響の広さ、長さは知れない▼〈原発は悪いものだと言ってません怖いものだと言ってるのです〉田口二千陸(ふじろく)。今、私たちが肌で感じる恐怖や不快を思えば、平和利用の恵みも色あせる。脱原発の試みは科学の敗北というより、被爆国の理性と考えたい。

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