HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Thu, 04 Aug 2011 22:08:43 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:港湾の復旧 防波堤の再建でよいか:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

港湾の復旧 防波堤の再建でよいか

 東日本大震災では多数の犠牲者や原発災害に目が向かうが、港湾の被害も大きい。住民の生活にかかわる港湾機能を回復、港や後背地を今後の災害から守るには、どんな方針で進めるべきだろうか。

 北海道から静岡県に至る太平洋沿岸の港が主に大津波により被災した。国際的な戦略・拠点港湾から重要港湾、地方港湾、漁港まで軒並みで、岩手、宮城、福島、茨城県に集中する。

 港口防波堤・港内防潮堤の倒壊、船の接岸岸壁の破壊や沈下、上屋や荷扱い施設の損傷など枚挙にいとまがない。

 三十年かけ完成、世界最大水深(六三メートル)に設置されたとギネス登録された岩手県釜石港湾口津波防波堤は、南堤の一部を残しほぼ全壊した。明治、昭和の大津波を体験した同県宮古市田老漁港付近に二十年以上かけ整備した防潮堤も、壊滅的損傷を受けた。

 港口などに防波堤・防潮堤を築き港内の海面を穏やかに保ち、港湾機能と後背地の安全を確保するのが従来の考えである。

 釜石港防波堤も、港内を襲う津波高を低くし、陸地に達する時間を遅らせるなど減災効果は指摘される。だが逆にケーソン(潜函(せんかん))の合わせ目に強い流れが起き、押されたり、基礎部が洗掘されて、防波堤は倒壊した。

 港と後背地を襲う津波を直接防ぐ海岸施設として、防波堤・防潮堤の役割は否定できない。しかし今回のような巨大地震に伴う津波が襲えば、効果はおぼつかなく、港の機能を復旧しても無駄を繰り返すかもしれない。

 被災の仕組みを正確に究明し、それに対応できる施設・構造物の強度や効果を明らかにするのがまず必要である。

 さしあたって近づく本格的な台風の季節に備え、内航、コンテナを含む外国貿易の荷扱い、漁業の操業再開に最小限必要な港湾機能の復旧を図るべきだろう。

 長期的視点では、被災港湾施設の原形復旧は疑問である。

 たとえば釜石港の防波堤は千二百億円以上の工事費が投じられたが、人口の増えない釜石市の地域振興には役立っていないとの批判は前からあった。原形復旧なら事業費はさらに多額だろう。

 港湾機能の再建には、被災地の産業や物流の復興、地域振興との関連を十分考えに入れなければならない。その上で順位と規模を決めるべきである。原形復旧が必要なケースももちろんあろうが、広く知見を集めて取り組みたい。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo