ある人物の能力を評価するという時、「誰某(だれそれ)の手腕を買う」とは言うが「売る」とは言わない。通貨だって買われるのは信用の証(あかし)、本来は売られるよりいいことだろう▼だが、無論、限度がある。最近の円の買われ方は異常だ。一時は戦後最高値に四銭まで迫った。輸出に頼る日本経済は青息吐息。昨日、政府・日銀はたまらず、ドル買い、円売りの為替介入に踏み切るなど対抗策に出たが、一気に超円高の解消とまではいかぬようだ▼米国はリーマン・ショックの後始末で、すっかり借金大国に。欧州もギリシャなどの財政危機を抱える。ドルやユーロに比べればまだ円の信用は高いというわけで、投資マネーが流れ込んでいるという。而(しか)して「比較的安全資産」というのが最近の円の通り名▼ただ、日本だって借金は九百兆円近く、GDPの倍に迫る。それでも円が買われる理由の大きな一つが消費税だとか。確かに先進国では税率はかなり低く、その“上げしろ”を財政健全化への潜在能力とみているらしい▼しかし、諸外国の投資家たちよ! わが国の政治をとくとご覧あれ。誇るつもりは毛頭ないけれど、何であれ、選挙に不利とみれば、棚上げ、先送りが十八番。いざとなれば発揮できるのが潜在能力だが、本当に必要な時に本当に税率アップできるかというと…▼どうだろう。少しは円を売る気になってくれた?