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天声人語

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2011年8月5日(金)付

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 まずは古里、そしていま住む街。思い入れのあるチームがいくつかあるから、甲子園は長く楽しめる。転勤族なら暮らした土地が気になるし、出身大学の系列校もあろう。今年は肩入れしたい学校がまた増えた▼あす始まる夏の高校野球で、初日から3日続けて被災県の代表が登場する。5年連続の聖光学院(福島)は県内61連勝中で、東北初の大旗も夢ではないらしい。一昨年の菊池雄星(ゆうせい)投手(西武)の印象が鮮烈な花巻東(岩手)、初陣の古川工(宮城)にも大声援が待つ▼内陸部にある3校は津波の被害こそ免れたが、肉親や家を失った部員もいる。「沿岸校の思いを胸に勝ち進む」と気負うのも無理はない。でも、被災地を背負うなんて大仰に考えなくていい▼地元が大災害に遭った年に甲子園に出る。それだけで大役である。何年もの努力が実ったのが、たまたまこの夏だった。「こっちに来てまで震災震災と言うつもりはない。戦いに集中させてやりたい」。聖光学院の監督さんが言う通りだ▼悲壮感もなく国中を元気づけた「なでしこ」のように、心ゆくまで聖地を楽しんでほしい。その姿に、被災者も、我々にわか応援団も元気をもらう。勝手にもらうから、「与えたい」などと力むことはない▼週刊朝日の増刊号で菊池投手が語っている。「本当の格好良さや美しさって、全力で生きる、その生きざまに表れると思うんです」。精いっぱいの走攻守は、浜風に乗せて「へこたれない力」を全国に運ぶ。それだけでいい。

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