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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
TBS系の人気番組「水戸黄門」が今年いっぱいで終わる。1200余回、42年の「善政」は徳川15代の各将軍にも見劣りしない。家斉(いえなり)の50年に次ぐ長期安定である▼堂々のマンネリズムだった。黄門一行は旅先で、ひたすら大小の悪を懲らしめる。何度も見たようなお家騒動、箱入り娘と職人の恋路を、豊かな地域色が補った。「この紋所が目に入らぬか」以下の大団円は微動だにしない▼人生楽ありゃ苦もあるさ……。ボレロ風の主題歌は、処世訓を連ねて視聴者の背中を押す。お供の女忍者が湯につかる場面など、長寿企画らしいお約束もにぎやかだった。常連を飽きさせないその味は、例えば老舗の串団子だろうか▼昨今、3世代がゆるりと楽しめる娯楽は少ない。東京の声欄に、「小学生も残念」と惜しむ母親の便りがあった。おじいちゃんと見て育った小6小3の姉弟、かの歌から番組を「人生」と呼んでいたそうだ。悲報を聞かされ、つぶやいた。「人生」が終わると▼5代目黄門、里見浩太朗さんも「後ろからズバッと斬られた思い」と悔しがる。ご老公を襲うとは不埒(ふらち)千万、視聴率なる曲者に違いない。かつて40%に達した国民的番組も、10%あたりを漫遊している。「頭(ず)が高い」の一喝も、水戸市長らの直訴もかなうまい▼これにて、民放の時代劇はレギュラー番組から姿を消し、再放送のみとなる。明日が見えない世情だからこそ、先の読めるフィクション、揺るぎなき勧善懲悪の世界が一つ二つほしいのだが。