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ユーロ安が進んだ昨秋、近所の宅配ピザ店が「円高還元」のチラシを配った。「イタリア直輸入」のトマトソースやチーズに差益が生じたという。値下げを知らせるついでに本場の味を自慢するあたり、なかなかの宣伝上手だ▼この超円高、外国と商う企業は一喜一憂の日々だろう。円高1円につき年に数百億円を失う大企業でなくても、輸出業者は頭を抱える。他方、海外旅行者はショッピングリストを書き足し、ピザ屋は次なる宣伝を考える▼円相場は一時、震災直後につけた1ドル=76円25銭の最高値に迫った。米国債はデフォルト、すなわち国家破産の危機をひとまず抜けたものの、格下げの懸念が消えない。足元の景気も心もとない▼震災にもかかわらず円が買われるのは、ドルやユーロとの「弱さ比べ」の結果だという。日本には千兆円を超す個人金融資産があり、消費税率もまだ低い。とはいえ、国と地方を合わせた借金は900兆円に近づき、いずれ「自己資金」で賄えなくなる▼米国では茶会(ティーパーティー)と称する共和党の強硬派が、国債の増発に最後まで抵抗した。小さな政府を求め、増税にも反対する彼らは、来年の大統領選でひと波乱起こす勢いらしい▼円高は「国家の信用力」を考える良い機会かもしれない。震災でかすんだが、わが国の財政改革に残された時間もそうない。少子化で縮む歳入のピザをどう分け合うか。茶会的な極論が台頭する前に、増税と歳出減でバランスよく痛みを分け合いたい。