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2011年8月1日(月)付

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民事裁判改革―審理充実へ知恵集めよ

長すぎる裁判をなくし、市民の期待に応える。司法改革の一環として、そんな目標を掲げた法律ができて8年になる。最高裁は2年ごとに実態を検証しているが、先ごろまとまった4回目[記事全文]

義援金の教訓―民間でも配れるように

東日本大震災の被災地に向けて、日本赤十字社や中央共同募金会などに空前の義援金が集まった。その一方で、なかなか被災者の手元に届かない状況に多くの人がいらだった。両者に寄せ[記事全文]

民事裁判改革―審理充実へ知恵集めよ

 長すぎる裁判をなくし、市民の期待に応える。司法改革の一環として、そんな目標を掲げた法律ができて8年になる。

 最高裁は2年ごとに実態を検証しているが、先ごろまとまった4回目の報告書は、現状の説明と分析から一歩踏み出し、裁判の充実・迅速化に向けて様々な施策を提言した。学者や弁護士ら外部の委員が、各地の裁判官、弁護士などから聞き取りをしてまとめたもので、興味深い内容となっている。

 例えば、以下のような仕組みを取り入れるかどうか、検討を進めることが盛り込まれた。

 ▽裁判官の訴訟指揮に従わなかったり、証拠の提出命令に応じなかったりする者に制裁を科す「法廷侮辱制度」

 ▽どんな分野に通じている弁護士かを、人々に分かりやすく示す「専門認定制度」

 ▽裁判をするには必ず弁護士を選任しなければならないと定める「弁護士強制制度」――

 実際に導入された場合、影響が大きいのはドイツなどが採用する弁護士強制だろう。日本では原告・被告双方に弁護士がつく例は、地裁の民事訴訟全体の3割ほどしかない。

 いわゆる本人訴訟には、弁護士を頼む手間が省ける利点がある。だが法的知識が十分でないため、主張を整理できなかったり、どんな証拠を出せばいいか分からなかったりすることが多く、審理は混迷しがちだ。

 たいてい裁判官が助言して軌道修正を試みるが、多くの手間がかかるうえ「裁判所が一方に肩入れしている」として不信を招くことも珍しくない。

 全ての事件に弁護士選任を義務づけるのは性急だとしても、例えば控訴審から、それも難しいようなら、法律の解釈や適用を争う上告審にまず取り入れ、段階的に進めるなどの対応を考えてはどうか。紛争の類型を決めて導入する道もある。

 裁判を受ける権利の制約に映るかもしれない。だが司法システムをどう効率よく運営し、全体の利益を図るかという「鳥の目」をもつことも大切だ。

 弁護士の専門認定も実現まで課題はあろうが、情報を広く開示しアクセスを容易にすることは社会の強い要請である。

 裁判員制度を機に刑事裁判に関心が集まった。だが市民の生活や経済活動に、より密接に関わるのは民事裁判だ。

 弁護士会でも改革に向けた検討が進んでいる。今回の報告書と重なる部分も、異なる視点からの提案もある。利用しやすく信頼できる民事裁判をめざし、建設的な議論を期待したい。

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義援金の教訓―民間でも配れるように

 東日本大震災の被災地に向けて、日本赤十字社や中央共同募金会などに空前の義援金が集まった。その一方で、なかなか被災者の手元に届かない状況に多くの人がいらだった。

 両者に寄せられた義援金は3千億円を超えた。このうち8割強は被災者がいる15の都道県に送金され、市町村へ送られた分も全体の7割を超えた。被災者自身には総額の約3分の1にあたる1千億円余りが各市町村から届けられたという。

 配分作業はようやく軌道に乗ってきたようだ。義援金は死者・行方不明者の家族や、住宅が全半壊した家庭、原発事故での避難世帯などに配られている。仕事を失ったままの人も多いだけに、配分を急いでほしい。

 それにしても、なぜこんなに遅れたのか。

 かつてない広域災害を受け、義援金の送付先は広い地域に及んだ。このため配分基準を決める委員会が初めて県をまたいで設置され、厚生労働省が事務局を務めた。国から県へ、県から市町村へと、義援金は流れる。あくまで民間の寄付金であり、県や市町村を通す必要はないが、確実・公平に配るには行政ルートが安心、という判断だ。

 半面、行政の手続きは融通がきかない。義援金を受け取るには、死亡診断書や住宅の全半壊の被害を示す罹災(りさい)証明書を発行してもらわねばならない。自治体によっては多くの職員が亡くなり、無事だった職員にもさまざまな業務がふりかかって、義援金の作業が後回しにされた例も少なくなかったようだ。

 今後の災害時には民間の手で配ることを検討できないか。被災者支援で現地にかけつけたNPOなどの手を借りるのだ。

 参考になる例がある。日本財団は4〜6月、10人前後のチームで被災市町村の役場や避難所を回り、死者・行方不明者1人あたり5万円を家族に配った。

 現金を封筒に詰め、市町村から借りた名簿と避難者らの運転免許証などを照合して渡す。自治体の職員に手伝ってもらったり、直接渡せない人には申請書類を郵送したりした。大きなトラブルはなかったという。

 義援金の配分の遅さは、阪神大震災でも問題となった。日赤が懇談会の議論を経てまとめた報告書は、義援金の配分について「透明性」「公平性」とともに「迅速性」の大切さを強調しつつ、「行政ルートを通じて行うことが不可欠」とした。

 ただ、被災地での民間団体の活動は厚みを増している。再び懇談会を設け、民間主体の配分を検討するよう、提案したい。

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