テレビ番組での「やらせ」続出の背景について、かつて、フリーディレクターの一人が本紙にこんな解説をしている。制作費と制作時間の制約に追われ、そのネタが「無理だと分かっても引き返せない」▼以前に大騒動となった食品偽装など、あらゆる偽装や「やらせ」に通じよう。無理だと分かっても、それをどうにかしようとするから、誤魔化(ごまか)しという“魔”が入り込む▼そして、昨日、また、言語道断の「やらせ」が伝えられた。中部電力・浜岡原発のプルサーマル計画をめぐる国主催のシンポジウムで、経産省原子力安全・保安院が、地元住民に肯定的な立場での質問を要請するよう同社に依頼していたというのである▼中電は結局、拒否したものの、四国電力・伊方原発の同様のシンポでも、保安院は“参加者工作”を同社に要請。四電は例文も示して依頼し、実際に、住民が例文に沿った質問もしていたという。あの九州電力の「やらせメール」も、もしや…と勘繰りたくなる▼「やらせ」が事実なら、保安院は、もはや原発の安全規制を所管する機関ではなく、原発を推進する機関ということになる。その信用はいよいよ地に落ちる▼「やらせ」に走ったとすれば、原発について経産省の思うように国民に思ってもらうのは「無理だと分かって」いたということだろう。当然だが、即刻「引き返す」しかない。