二〇一一年度第二次補正予算案が成立した。東日本大震災の復旧に向けた前進だが、がれき処理や二重ローンへの対応など、急がねばならない法整備が依然残る。国会の仕事はまだ終わっていない。
二次補正の成立は、菅直人首相が言及した退陣「三条件」の一つだ。早期退陣を促す民主党執行部は大きなヤマを一つ越えた気持ちだろう。残る二条件の公債特例法案と再生エネルギー特別措置法案の成立に全力を挙げるという。
一一年度予算は歳入の四割を赤字国債で賄うため、公債特例法案が成立しなければ歳入欠陥が生じる。社会保障など行政サービスの低下で影響を受けるのは国民だ。
再生エネルギー特措法案も十分ではないが、自然エネルギーの活用を促し、「脱原発」に向けた一歩を踏み出す契機となる。
退陣条件であるか否かにかかわらず成立させるべき両法案だ。
国政調査権を持つ国会議員にとって政府追及は重要な仕事だが、辞める気がない首相をいくら攻め立てても「馬耳東風」だろう。
貴重な審議時間をそんなことに費やすより法案を一本でも多く成立させた方が国民のためになる。与野党協議の加速を求めたい。信頼関係が深まれば、ねじれ国会を乗り切る知恵も自然と出てくる。
にもかかわらず、民主党の態度が頑(かたく)ななのはどうしたことか。
自民、公明両党が公債特例法案成立の条件とした子ども手当の見直しをめぐり、民主党は所得制限を受け入れたものの、野党が納得する案の提示には至っていない。
民主党執行部が慎重なのは、マニフェスト堅持を求める小沢一郎元代表に近い議員グループの反発を招きたくないからだろう。
しかし、党内事情と国民生活とどちらが大事なのか。子どもを社会全体で育てるという理念を維持できるぎりぎりの範囲内で大胆に譲歩することも必要ではないか。
原子力損害賠償支援機構法案や原発賠償仮払い法案は与野党が修正に合意したが、がれき処理を進める特例法案や二重ローン救済法案は主張に隔たりがある。
自説に固執して時間切れになる事態は避けねばならない。優先すべきは被災地復旧・復興や被災者救援だ。小異を捨てて大同につく決断を与野党に求める。
復興財源を確保するための国家公務員給与削減法案は、民主党が今国会成立を早々と諦めた。公務員に対する国民の視線は厳しい。成立に躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。
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