HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 22 Jul 2011 21:06:00 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:東電女性殺害 新事実に目を凝らせ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

東電女性殺害 新事実に目を凝らせ

2011年7月22日

 無期懲役が確定した東京電力女性殺害事件で、新鑑定結果が出た。被害者の体にあった体液などが受刑者とは別人のDNAだったのだ。新事実に目を凝らし、再審の可否の結論を早く出すべきだ。

 大企業の管理職だった女性が被害者だったことで話題を呼んだ事件だった。ネパール人の受刑者が、逮捕当初から「やっていない」と無実を訴えていたことでも注目された。

 確かに受刑者と事件を結び付ける直接的な証拠はなく、状況証拠を積み上げて、検察側は「犯人だ」とした。

 一審は「第三者が現場にいた可能性が否定できない」と無罪判決を出した。同じ証拠でありながら、二審は「第三者が被害者と現場の部屋に入ったとは考えがたい」と逆転有罪を言い渡し、最高裁も追認した。

 服役中の現在も「無実」を訴え続け、裁判のやり直しを東京高裁に求めていた。その過程で弁護団が、被害者の体内から採取された体液のDNA型鑑定を要求し、専門家が実施したところ、受刑者のものではないうえ、殺害現場の部屋に残されていた体毛の一本と型が一致した。

 常識的に考えて、この事実が指し示すのは、受刑者とは別人の「第三者」が殺害現場にいた可能性が出てきたことだろう。

 そもそも問題となった体液は、捜査段階で重視されず、DNA型鑑定をしていなかった。被害者が殺害の約二時間前に別の男性と現場近くのホテルにいたことが分かっており、その男性にはアリバイがあったからだ。捜査側は体液はその男性のものだと思い込んで、軽視していたのではないか。

 今回の鑑定で分かったことは、DNA型がこの男性のものとも異なり、受刑者のものとも異なる点だ。捜査段階でDNA型鑑定を行わなかったのは、警察・検察当局の重大な失点といえよう。

 検察側は「有罪主張は変わらない」としているが、新旧の証拠を総合し、受刑者が犯人であることへの合理的な疑いが生じれば、再審開始ができる。

 確定判決と矛盾しかねない新事実が浮上した以上、再審開始の可能性も出てきた。問題の体液はいつ被害者に付着したのか。体液と同じDNA型を持つ人物の体毛は、どうして殺害現場にあったのか。新たな疑問が湧いたことで、「有罪」に導いた状況証拠そのものを真っさらな目で一から再点検すべきである。

 

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