HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 22 Jul 2011 02:10:03 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:奥州伊達藩のお家騒動を描いた歌舞伎『伽羅(めいぼく)先代萩…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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2011年7月22日

 奥州伊達藩のお家騒動を描いた歌舞伎『伽羅(めいぼく)先代萩(せんだいはぎ)』。その登場人物、乳人(めのと)政岡は、女形最高の大役ともいわれる▼芝居の中で、主君への忠義のために、幼いわが子を見殺しにする政岡。無論、したくてしたことではない。一人になって「ああ、なんて親なのだ」と、こらえにこらえ、押し隠していた悲嘆を露(あら)わにする場面で、こう言う。「三千世界に子を持った親の心は皆一つ」▼どれほど広い世界でも、親の子を思う心は…。そう思いたい。そう思いたいけれど、そうとは言いきれない現実が、残念だが、ある。例えば、食べ物も与えず、子を餓死させてしまうといったケースが後を絶たない。同じ、わが子を死なせるのでも、政岡の場合より、よほどむごい▼厚生労働省によると、昨年度、全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の通報や相談の件数が初めて五万件を超えたのだという。前年度より三割近く増えた。虐待への意識の高まりで通報されやすくなったともされるが、虐待自体が増えていないという証拠もない▼無論、わが子を思わぬ<親の心>こそ問題だ。だが、母性や父性の劣化だと片付けては、状況は変わるまい。未熟な親をも支えるような、人のつながり、社会の懐の深さが失われてきていることに思いを致すべきだろう▼高止まりする自殺者数も、孤独死の増加も、みな、つながっている気がする。

 

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