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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
英語圏の有力紙やテレビ局を抱えるルパート・マードック氏(80)。その名が日本で大きく報じられたのは15年前、ソフトバンクの孫正義氏と組んでテレビ朝日株の2割強を握った時だ。わがメディア界は、黒船襲来と大騒ぎになった▼くだんの株を買い取った朝日新聞の社長(当時)が、マードック氏の印象を語っている。「孫氏への説得の仕方を観察するに、大先輩がやんちゃな後輩を温かく見守っている感じだった」。無論、氏のビジネスは温かさと無縁である▼そのメディア王が窮地にある。傘下の英大衆紙が、事件の被害者ら多数を盗聴した疑いが深まったためだ。元幹部たちが捕まり、168年の歴史と265万の部数を誇る同紙は廃刊。攻守所を変えて叩(たた)かれている▼ことは老メディア王の落日にとどまらない。警察や政界との癒着が露見、ロンドン警視庁トップが辞任した。逮捕された元編集長を重用し、マードック氏や側近と親密だったキャメロン首相は釈明の日々だ▼この大衆紙の「盗聴癖」は知られていたが、警察は深追いせず、政治家は仕返しを恐れた。だが、盗聴先が一般人を含む4千人とされては空気も変わる。組織的な「のぞき見」取材、ゆがんだ商業主義に、国民と同業者の怒りは大きい▼強大なメディアほど、自らの不祥事に弱い。恥ずべきニュースを、ぎこちなく伝えるのみだ。大衆の興味を糧に築いたメディア帝国が、醜聞の海でもがいている。希代の「情報使い」が、商品に逆襲される図である。