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政府は関西、北陸、中国、四国、九州の電力5社に対し、20日になって急きょ、この夏の節電を要請した。東京、東北電力管内のような強制力のある電力使用制限令ではないが、この夏[記事全文]
「メディア王」と呼ばれるルパート・マードック氏が所有する大衆紙による盗聴事件が、英国のキャメロン政権や警察首脳もからんだ大スキャンダルになりつつある。疑惑の中心は、今月[記事全文]
政府は関西、北陸、中国、四国、九州の電力5社に対し、20日になって急きょ、この夏の節電を要請した。
東京、東北電力管内のような強制力のある電力使用制限令ではないが、この夏は列島あげて節電に全力をあげなければならない事態になった。
西日本でも電力不足が懸念されるのは、定期検査で停止中の原発の再稼働が見込めないなか、関電の原発と中国電の火力発電所がトラブルで止まり、電力需給の見通しが一気にひっぱくしたからだ。
西日本には震災で壊れた大規模発電所はないし、同じ周波数の地域が広く、電力の融通もしやすい。それでも昨年並みの電力需要があれば、5社合計ではピーク時に電力不足に陥りそうだという。とりわけ、発電量の約5割を原発で賄ってきた関電が深刻だ。
原発の再稼働をあてにしているうちに、政府も電力会社も対策が後手に回ったのは明らかだ。節電体制づくりの準備不足という点では、西日本の方がむしろ厳しい展開と言える。
ただ、今からできることは限られている。当面はありとあらゆる節電でしのぐしかない。
要は、暑さの厳しい時間帯に電力使用が集中しないようにすることだ。そのためには、地域や職場、家庭で相談して、工夫を凝らしていく必要がある。
もともと、西日本は大震災の被災地から遠い。企業の中には東日本の電力不足を見越して、わざわざ西日本へ生産拠点や管理部門を移したところもあるくらいだ。地震の実感がないぶん、住民は「なぜ節電なのか」という思いだろう。
それでも、節電が不可欠な現実と向き合わねばならない。
何より効果的な節電をするには、政府や電力会社が供給能力や需要動向に関する情報をきちんと開示することだ。
とくに最も不足が心配される関西ではいま、政府が「10%以上」、関電が「15%」、自治体でつくる関西広域連合が「5〜10%」と、ばらばらな目標値を設定している。
これでは、住民は本当に足りない電力がどのくらいなのか、どれだけ暑さを我慢しなければならないのか、わかりにくい。
ただでさえ、計画性を欠いた政策変更を繰り返す政府と、九電のやらせメールに象徴されるような企業体質を引きずる電力会社に対し、国民の不信感は募っているのだ。
もっと根拠のある数字と、納得できる説明が要る。それが夏を乗り切る最低条件になる。
「メディア王」と呼ばれるルパート・マードック氏が所有する大衆紙による盗聴事件が、英国のキャメロン政権や警察首脳もからんだ大スキャンダルになりつつある。
疑惑の中心は、今月廃刊になった英紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドだ。有名人のスキャンダルを売り物にするタブロイド紙で、大部数を誇っていた。私立探偵をやとって電話を盗聴するやり方で「特ダネ」を狙い続けた。被害者は政治家から芸能人まで約4千人という。
その矛先が誘拐殺人事件の被害者の携帯電話にまで向けられていたことが今月、明らかになり、世論の反発を浴びた。
発端は5年前に起きた王室担当記者による盗聴だった。記者は逮捕されたが「単独犯行」とされた。辞任したコールソン編集長はキャメロン党首によって保守党の広報担当に起用され、官邸の報道局長にもなった。この元編集長をはじめ、何人もが逮捕されている。
見過ごせないのは、新聞と権力との構造的な癒着だ。
事件を捜査するロンドン警視庁の総監も、同紙の元副編集長を広報担当に採用していた。記者が携帯番号などの提供を受ける見返りに、警官にわいろを贈っていた疑いも出ている。
キャメロン首相の就任後に、マードック氏は官邸への最初の客として招待された。総選挙での応援のお礼だったという。
マードック氏は英国で、サン紙やタイムズ紙などとあわせ、発行される新聞の約4割を支配してきた。衛星放送事業も拡大しようとしていた。ビジネスを優先し、報道機関が守るべき倫理がなおざりになってはいなかっただろうか。
政治家も、メディア王の力を自分のために使おうとしていなかっただろうか。英国政治では「マードック氏を敵にまわしては選挙に勝てない」というのが常識になっていたという。
英政府には報道への規制を強めようという動きが出ている。特定の人物にメディアの寡占を許したことが、不健全な関係を招いた一因だろう。市民の不信も広がっている。
だが、メディアは権力による規制よりも、自浄力によって間違いを正さなければならない。今回も、盗聴事件の再捜査へのきっかけは、粘り強く報道したガーディアン紙などによるスクープだったことを評価したい。
事件はメディアの自壊を招きかねない危うさを示している。それは民主主義の基盤を揺るがす。市民の知る権利にこたえる本来の役目を自覚したい。