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2011年7月21日(木)付

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津波と消防団―251人の教訓から学ぶ

田中幸子さんは、仙台市で自死遺族の集まり「藍の会」を主宰している。震災でわが子を亡くした親からも相談が来る。宮城県石巻市の母親は、消防団員の息子が、避難の誘導中に津波に[記事全文]

生活保護―仕事に戻れる支援を

生活保護の受給者が200万人を超し、過去最多に迫る勢いだ。生活保護は、暮らしが困窮した人のための「最後の安全網」である。そこに頼らざるをえない人が増え続ける状況に、なんとか歯止めをかけたい。[記事全文]

津波と消防団―251人の教訓から学ぶ

 田中幸子さんは、仙台市で自死遺族の集まり「藍の会」を主宰している。震災でわが子を亡くした親からも相談が来る。

 宮城県石巻市の母親は、消防団員の息子が、避難の誘導中に津波にのまれたという。

 「多くの命を救った立派な息子さんですねと、皆さんおっしゃってくださる」

 「でも、英雄になんかならない方がよかった。ひと様を助けるより、息子には生きててほしかったのに」

 押し殺した涙声になる。同じ立場の母親からの電話が、ほかにも何本かあったという。

 消防団員は地域で仕事をしながら活動する非常勤の地方公務員だ。震災では岩手、宮城、福島3県で251人が死亡あるいは行方不明になった。消防署員と警察官の犠牲がともに約30人なのと比べて際だって多い。

 働き盛りの男性が中心で、多くの子どもが残された。毎年、全国で殉職する消防団員は数人ほどだから、今回の事態に共済制度の遺族補償が十分に支払えない。何らかの遺族支援策で補えないものか。

 津波が迫る防潮堤に水門を閉めに向かった人。避難を呼びかけるため、やぐらで半鐘を鳴らし続けた人。多くの団員が誰かを助けるために命を落とした。

 私たちは敬意と感謝を忘れない。そのうえで、決して英雄視するだけで終わってはならないと考える。

 実践的な防災教育で知られる群馬大の片田敏孝教授は、危険を顧みずに職務を全うすることを是とする風潮は危うい、と指摘する。彼らの安全を確保する方策は十分だったのか、という問題提起だ。

 最近の消防団は、携帯電話で連絡を取り合うことが多い。携帯が通じないなか、津波の予想高が引き上げられたことは伝わったのか。通信装備などの改善を急がねばならない。

 三陸地方の団員は毎年、津波訓練を積んできた。浸水想定区域のすぐ外側で海を監視し、逃げるときはしんがりを務める。そんな想定は適切だったか。

 消防団が呼びかけても逃げようとしない住民がいた。そうした人々も含めた防災教育の見直しが欠かせない。

 総務省消防庁は、大災害時の消防団活動のあり方を議論していく予定だ。まずは被災状況の詳細な検証が出発点になる。

 かねて消防団員のなり手不足は深刻だった。大震災は地域の防災の担い手としての重要性を改めて教えてくれている。

 だからこそ、悲劇から学ばなければならない。

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生活保護―仕事に戻れる支援を

 生活保護の受給者が200万人を超し、過去最多に迫る勢いだ。生活保護は、暮らしが困窮した人のための「最後の安全網」である。そこに頼らざるをえない人が増え続ける状況に、なんとか歯止めをかけたい。

 戦後の制度創設から長期的には下がり続けてきた受給者数が増加に転じたのは1996年。さらに2008年のリーマン・ショックが追い打ちをかけた。

 最も多い大阪市では、いまや18人に1人が保護の対象だ。費用の4分の1を負担する市区町村にとって、財政を圧迫する要因にもなっている。

 原因の一つは、高齢化だ。人生の後半期には経済格差が拡大する。現役時代に十分な収入や蓄えを得られなかった高齢者の増加は、年金制度の見直しとも絡む大きな問題だ。政府が進める社会保障と税の一体改革の中で、長期的な対策を立てる必要がある。

 一方で、このところの急増は職を失った現役世代によるところが大きい。病気やケガもなく、本来は働ける人たちが、できるだけ早く労働市場に戻れるよう手を尽くしたい。

 今国会で成立し、10月から施行される求職者支援法は新しい試みだ。生活費を得ながら無料で職業訓練を受けられる制度である。失業給付の対象外だったり、給付が切れたりした人が、いきなり生活保護に陥ることを防ぐ「第2の安全網」としての役割が期待されている。

 実効を上げるためにカギを握るのは各自治体の福祉窓口と、厚生労働省の管轄下にあるハローワークとの連携だ。両者の風通しはこれまで必ずしも十分ではなかった。情報交換や協議の場を設けて、地域特性や労使の実情をよく把握し、一体となって制度運用にあたってほしい。

 失業者が置かれている状況はさまざまだ。家庭の事情や生活環境の違いもある。負い目を感じて閉じこもりがちになる人や、求職活動がうまくいかないことが続くうちに意欲を失ってしまう人も少なくない。

 きめ細かい支援につなげるため、特定の担当者が継続して相談に乗る「パーソナル・サポート」の強化も急ぎたい。貧困ビジネスなど悪質な不正を防ぐ有効な手だてにもなりうる。

 各自治体とも人手不足に悩んでいるが、重点的な対応が生活保護を脱する早道になる。専門的な知識や経験のあるNPOや退職者の活用を含め、計画的な配置を考えてほしい。

 働いて賃金を得て、消費する人が増える。それが、日本経済の浮揚にもつながるはずだ。

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