政府の子ども・子育て新システム検討会議の作業部会が、子育て支援制度改革の中間報告をまとめた。すべての子供たちに必要な幼児教育や保育を提供することが目標だが、報告は中途半端だ。
どこに住む子供だろうと、どんな事情を抱えた子育て家庭だろうと、幼児教育や多様な保育サービスを一体的に提供し、就学前の子供の育ちを社会で支える。新システムが目標とする制度である。
政府は昨年六月、目指すべき姿を描いた「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」を決定し、それに向け作業部会で議論してきた。改革の切り札が幼稚園と保育所の一体化だ。
中間報告では、一体施設はできるが、幼稚園と、三歳未満児のみを預かる一部の保育所も残った。ゼロ歳〜五歳児を預かる大半の保育所は一体施設に移行させるが、幼稚園にはその規定はない。
三歳未満児の保育所が残るのは、一体施設に三歳未満児受け入れを義務付けないからだ。三歳以上を対象としてきた幼稚園に配慮したように見える。これでは待機児童が多い三歳未満児の行き場も増えない。
幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省と分かれる所管を内閣府に統一し、二重行政を解消する見通しも立っていない。
子育て家庭は、すべての子供に質の高い幼児教育・保育が提供されると考えているはずだ。実態として複数の施設が混在することは分かりにくい。社会で子育てを支えるとのメッセージは伝わらないのではないか。
幼保一体化はこれまでも、幼稚園関係団体などが反発してまとまらなかった経緯がある。今回もその壁を乗り越えられなかった。
制度充実には二〇一五年度でさらに約一兆円が必要だが、財源確保のめども立っていない。
民主党は、子育て支援強化を重要視し、マニフェストでも幼保一体化を掲げてきた。六月にまとめられた社会保障改革案でも菅直人首相は、最優先の安心三本柱のトップに据えた。政治のリーダーシップが求められたが、努力不足を自覚すべきだ。
政府は来年の通常国会に法案を提出し、一三年度から本格施行する。それまでに国と地方・企業との財源負担のあり方など詰める課題は残っている。
作業部会は中間報告を「プロセス」と強調した。子育て家庭が「支えられている」と実感できる制度を粘り強く追求してほしい。
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