HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 14867 Content-Type: text/html ETag: "cceda7-34a8-1eb72d40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 19 Jul 2011 20:22:13 GMT Date: Tue, 19 Jul 2011 20:22:08 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年7月20日(水)付

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 高知県鏡村(現高知市)の小3男児が書いた「きり」という短い詩がある。『えんぴつでおしゃべり』(あゆみ出版)で見つけた。〈朝、きりがかかっていました。山が、おふろに入っているようでした〉。乳白色に煙る里山が目に浮かぶ▼この童心に習えば、数日来の西日本は「山が、おふろの中でシャワーを浴びている」とでもなろうか。台風6号は7月としては横綱級で、高知県の一部では降り始めからの雨量が千ミリを超えた。しかも横殴りだ▼台風の予想進路に驚く。北に直進してきたものが、列島に達したところで東に向かうという。この「右折」、台風に円弧を描かせる太平洋高気圧が衰えたせいらしい。交差点の車よろしくブレーキがかかり、雨風の影響もそれだけ長く続く▼台風の長っ尻にいいことはないが、ともかく猛暑は和らいだ。大地に巣くう熱が流されたか、東京の最高気温は冷房の節電目標である28度台に下がった。ひと息ついた人もおられよう▼気象随筆の倉嶋厚さんによると、日本には「雨乞いの山」が20以上もあるそうだ。雨乞岳、雨乞山、雨呼山(あまよばりやま)。先人はそれほど、日照りを恐れた。もちろん、恵みの雨とはほどほどの降りを言う。田畑が冠水し、家を流されては元も子もない▼照ればお湿りを乞い、降れば陽(ひ)を求めるのが人の常だが、ほどほどを知らない自然は時に無慈悲になる。この夏、せめて台風ぐらい被災地を外してくれないか。北上を思いとどまったような6号の動きに、淡い望みを託す。