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2011年7月20日(水)付

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家賃判決―透明性高める努力を

家や部屋を借りる時に結ぶ契約は地域で大きく違う。それまで当たり前のようにあった取り決めが転居地にはなく、かわりに耳慣れぬ名目でお金の支払いを迫られる。そんな経験をした人も多いのではないか。[記事全文]

関空・伊丹統合―日本の空の戦略を示せ

関西空港と大阪(伊丹)空港の経営を統合するため、国が全額を出資して新会社「新関西国際空港会社」を発足させる。空港の大型統合は国内では初めて。2空港を一体運用し、羽田、成[記事全文]

家賃判決―透明性高める努力を

 家や部屋を借りる時に結ぶ契約は地域で大きく違う。それまで当たり前のようにあった取り決めが転居地にはなく、かわりに耳慣れぬ名目でお金の支払いを迫られる。そんな経験をした人も多いのではないか。

 住まいの賃貸借をめぐる二つの特別な契約について、最高裁が相次いで判断を示した。

 ひとつは、まとまったお金を借り手が家主に最初に納め、退去時に一定額を差し引いて返還を受ける「敷引(しきびき)契約」。もうひとつは、契約を延長する際に借り手が賃料に応じた金額を支払う「更新料契約」だ。前者は近畿圏や福岡で、後者は首都圏や京都などでよく見られる。

 借り手側は「情報や交渉力に劣る借り手の権利を侵す」と訴えた。しかし最高裁はいずれの契約についても合理性を認め、「信義則に反して借り手の利益を一方的に害するものとはいえない」と結論づけた。

 長年続く約束事で、それを前提に地域の社会や経済は成り立っている。仮に無効としたら各地で返還を求める動きが起き、相当の混乱やトラブルが予想される。そうした影響への配慮も働いたのだろうか、現実を追認する判断となった。

 一方で判決は、「賃料や補修費、更新期間などに照らして高額に過ぎる場合は無効」とも述べている。「高額に過ぎる」とはどの程度か。答えは示されておらず、現在の水準を前提に、裁判例を重ねるなかで合意を見いだしていくことになる。

 一連の裁判で家主側は、総支払額は契約時にほぼ計算できることや、ネット時代になって、借り手側も多くの情報を集め条件を比較できることを挙げ、契約の正当性を主張した。

 たしかに今は空室率も高く、「借り手=弱者」の図式は直ちに成立しない。それでも特約に釈然としない思いを持つ人は少なくないだろう。

 物件の価値を高めるため家主はどんな投資をしているのか。予定の年月住むと負担は全部でいくらで、月額にならすといかほどになるのか。そうした情報を双方が認識し、交渉の土台を共有することが大切だ。

 透明性の確保は時代の要請である。不動産業界はそれにふさわしい契約のあり方を検討し、広げてもらいたい。万一の滞納に備えた保証金などを除いて、支払いは賃料一本とするのが目ざす方向ではないか。

 判決は、家主に丁寧に説明する責任の重さを、借り手には取引の主体として契約を正しく理解し履行することの大切さを、それぞれ説くものとなった。

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関空・伊丹統合―日本の空の戦略を示せ

 関西空港と大阪(伊丹)空港の経営を統合するため、国が全額を出資して新会社「新関西国際空港会社」を発足させる。

 空港の大型統合は国内では初めて。2空港を一体運用し、羽田、成田と並ぶ国際拠点空港として再生させる狙いだ。

 5月に成立した両空港の統合法によると、新会社は両空港の滑走路や関空の空港ビルを運営する権利を民間に売却する。その売却収入や土地の使用料収入で、1兆円を超える関空の負債を返済していくという。

 収益性の高い伊丹をセットにして関空を抜本的に立て直すというが、絵に描いた餅になる恐れはないか。疑問は尽きない。

 そもそも買い手はいるのか。

 国土交通省の試算では、1兆2500億円で購入し、頭金として4千億円を払った場合、利益を出すには、関空の売り上げを10年後には1.5倍にする必要がある。ハードルは高い。

 買い手が両空港をどこまで自由に経営できるのかも不明だ。

 伊丹をめぐっては大阪府知事が廃港を主張し、存続を唱える兵庫県と対立している。買い手が伊丹に国際線を復活したいと考えたら実行できるのか。

 これだけの金額を出せる企業は国内にはないという見方が一般的だ。外国企業に売却しても安全保障上の問題はないと、腹をくくっているのだろうか。

 関空は空港建設会社が運営会社に移行したため、建設費の借金を背負っている。負債は年間売上高の10倍に達し、利払いは年約200億円にのぼる。

 廃止するはずだった伊丹を残し、神戸空港の建設まで容認した国の空港政策と地域の身勝手さが経営をさらに悪化させた。

 国は年90億円の補給金を拠出して経営支援を続けたが、一昨年の事業仕分けで否定された。

 そこでひねり出されたのが統合法であり、抜本的な解決になるとはとても思えない。

 アジア各国がハブ空港の整備に力を入れるなか、日本は甘い需要予測をもとに全国に100近くの空港をつくった。それぞれが路線を誘致して、経営は悪化した。利用者にとっても使い勝手の悪い空港が多い。

 半径20キロ圏内に3空港がひしめく近畿の状況は、航空行政の混迷の象徴といえる。

 日本の空の玄関口の長期戦略をどう描き、その中で3空港をどう位置づけるか。国が具体的に示すことが、買い手探しより先決ではないか。

 そのうえで、需要確保のめどが立たないなら、いずれかの空港の廃止も含めた選択と集中が避けて通れないだろう。

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