訪日する外国人数に回復の兆しがある。といっても、まだ前年の七割弱。世界に広がった「日本は危険」の誤情報を正さなければならない。国民挙げて「日本は安全」を発信し復興をもり立てたい。
「声を大にして、この美しい国を訪れるべきだと言いたい」。被災地支援の慈善コンサートで来日した米人気歌手のレディー・ガガさんは訴えた。溝畑宏観光庁長官から会津の郷土玩具「起き上がりこぼし」を贈られ涙を見せた。
福島第一原発の事故で激減した訪日客の回復に一役買おうと、外国のタレントやスポーツ選手らが来日している。被災地にエールを送るだけでなく、見たまま、感じたままの「日本は元気」を世界に伝えてくれてもいる。大変ありがたい。
五月に中国の温家宝首相と韓国の李明博大統領が被災地入りした。以来、両国は日本への渡航自粛を徐々に緩和し、団体ツアーの復活につながっている。
でも世界には、同原発の周辺だけでなく日本全体が放射能に汚染された、という誤った情報が定着してしまった。「東京へ行くのなら、線量計を持参した方がいい」という話も聞こえてくる。
政府もただ手をこまねいていてはいけない。外務省と観光庁は六月末から七月初め、パリ近郊で開かれた日本紹介の民間イベントに参加し、正しい情報提供に努めた。アイドルグループ「嵐」が出演のPR映像も作り、世界各地で放映する。日本から「大丈夫」を発信し続けなければならない。
日本政府観光局によると、六月の訪日外国人は前年比36%減の四十三万三千人で、四月の62%減、五月の50%減より改善した。夏休みに向けて、格安航空会社の進出や大手ホテルの格安プランも提供される。効果にも期待したい。
十月に仙台市で観光復興国際シンポジウムの開催が決まった。朗報だ。またとないチャンスだ。中部九県などの広域観光推進協議会は、石川県の谷本正憲知事を団長に東アジアへトップセールスに出た。官民が連携して日本の安全を世界に発信しよう。
姉妹都市間では残念ながら、海外からの青少年派遣が相次いで中止されている。訪日にはまだ時間がかかりそうだ。その間でも、交流は続けられる。連絡を取り合い、不安を取り除きたい。
政府は新成長戦略に観光立国を掲げた。経済波及効果が高い基幹産業でもある。観光で国を再生する意気込みを見せるときだ。
この記事を印刷する