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郵便不正事件で地に落ちた信頼をいかに回復するか。最高検がこのほど検察改革の現状と今後の課題を明らかにした。捜査に対する批判や苦情を受け付ける監察部門を設け、外部から起用[記事全文]
外国軍が撤退したからといって戦闘は終わるわけではない。紛争当事者の間の和解がなければ和平実現はおぼつかない。アフガニスタンから米軍を中心とする外国軍の撤退が始まった。2[記事全文]
郵便不正事件で地に落ちた信頼をいかに回復するか。最高検がこのほど検察改革の現状と今後の課題を明らかにした。
捜査に対する批判や苦情を受け付ける監察部門を設け、外部から起用する「参与」に結果を報告し、助言を求めることなどが盛り込まれた。
「共犯者はこう話している」と、うそを言って供述を引き出す尋問、食事やトイレへの配慮を欠く取り調べ、脅迫、証拠の隠匿――。監察部門に届けるべき行いとして挙げられたものを見るとため息が出る。
こんなことを改めて通知しなければならない検察とは何なのか。一部の不心得者がいるという話ではない。検事の意識調査によると、回答者の4分の1が「無理な取り調べだと感じる事例を周囲で見聞きする」と答えている。病根は深い。
最高検はあわせて、特捜部のあり方について、国税当局や証券取引等監視委員会、警察などとの連携を強めることを打ち出した。自ら事件の端緒をつかんで摘発する「独自捜査」重視の態勢を見直すという。
証券・金融事件や脱税、談合など経済社会の根幹を脅かすホワイトカラー犯罪の摘発は、検察に期待される重要な使命だ。だが特捜部には「政界に斬り込んでこそ」との思いが強い。
そのギャップが、国税などから持ち込まれる事件への対応遅れや、金融工学など先端知識の習得不足、捜査力の劣化をもたらしたと指摘されて久しい。私たちメディアも報道姿勢を省みる必要があるだろう。
裁判員制度の導入が決まって10年。この間、捜査段階の調書ではなく、法廷で証人が話す内容や表情、客観的な証拠に基づいて有罪無罪を判断しようという志向が強まっている。
にもかかわらず、贈収賄事件などが裁判員裁判の対象になっていないことから足元固めを怠り、結果として大きな流れから取り残される。それが今の特捜検察ではないか。現実との隔たりはここにも見られる。
現場の検察官の意識改革が求められるのは言うまでもない。
だが、それだけでこの行き詰まりを打ち破るのは難しい。公判で真実に迫ることができるよう、法律を見直し、証拠を集める手立てを充実させる。法廷でうそをついても、偽証として追及せず不問に付してきたこれまでのやり方を改める。
そうした制度・運用面の整備と、特捜検察を特別扱いしてきた組織および人事政策の改革がともに進められて初めて、検察再生の道は見えてくる。
外国軍が撤退したからといって戦闘は終わるわけではない。紛争当事者の間の和解がなければ和平実現はおぼつかない。
アフガニスタンから米軍を中心とする外国軍の撤退が始まった。2014年末までにアフガン側に治安権限を譲り、部隊の駐留を終える予定だ。
時を合わせるように、アフガンの反政府武装勢力タリバーンと米国、カルザイ政権との間で細々ながら、和解をめざす政治対話が始まった。
タリバーンとの政治対話を求める提言をシンクタンクでまとめたピカリング元米国務次官が来日し、松本剛明外相に和解努力への協力を求めた。
10年越しの戦争は大きな転機に差しかかっている。日本はしっかり対話の進展を見守り、和平実現を後押しすべきだ。
軍事力によって和平を定着させる試みは挫折した。全土での軍事作戦にもかかわらず、タリバーンは農村部を支配し、国連施設などを自爆攻撃している。
もはや政治対話を通してしか戦争の出口は見いだせまい。
和解協議の中で注目されているのは、ドイツの仲介によってタリバーンと米国との間で始まった直接対話だ。昨年末から秘密裏に数回行われたという。
ドイツは、タリバーン政権崩壊直後の01年12月にボンで支援国会合を開催した。10年後にあたる今年12月に再会合の開催を決めた。タリバーン代表の出席が実現すれば、和平への大きな足がかりになろう。
カルザイ政権とタリバーンとの間の信頼醸成の取り組みにも期待したい。タリバーン元兵士の社会復帰とともに、双方の指導者間の対話のパイプを太くしていくことが必要だ。
とはいえ、対話を進展させるのは容易ではない。
国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を殺害した米国はアルカイダとの決別のほか、武力の放棄を求めている。外国軍の早期撤退を求めるタリバーンとの接点を見いだすには粘り強い交渉力と忍耐が求められよう。
対話の進展のためには国連はもとよりパキスタンやイランなどの協力も欠かせない。
和解後のアフガン再建を支援することは、日米関係の深化のためにも重要だろう。来年は、日本がアフガン復興支援国際会議を主催して10年になる。
東日本大震災と政局で日本人の目は内向きになりがちだ。しかし震災時には、貧しいアフガンの人々からも義援金が寄せられた。その親愛の思いと和平への期待にこたえていきたい。