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天声人語

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2011年7月17日(日)付

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 古くから梅にウグイスと言うが、あれは「梅にメジロ」の場合が多い。花蜜が好きなので梅の花を求めて枝に来る。本物のウグイスは警戒心が強く、姿を見せることはめったにないらしい▼可憐(かれん)な姿をウグイスに間違われ、いささか不遇なメジロだが、「美声」なら数百万円もの値がつくという先日の記事には驚いた。鳴き声を競う「競鳴会」が各地で開かれているそうだ。このため密猟が横行し、観賞(愛玩)目的の捕獲が禁止されることになった▼観賞用の捕獲は、以前はウグイスやヒバリなど7種の鳥で認められていたが、今はメジロだけになっていた。飼って楽しみたい人は残念だろうが、高値の売買は一部で暴力団の資金源にもなってきたそうだ。これではメジロも浮かばれまい▼ルナールの名高い「博物誌」に「鳥のいない鳥籠」の話がある。ある男が鳥籠を買った。籠の中には、毛綿で作った巣と、草の実の皿と、新鮮な水を入れたコップが置いてある。なのに肝心の鳥がいない▼聞かれると彼はこんなふうに言う。「この籠に鳥を一羽入れたっていいわけだ……ところが僕のおかげで、その一羽は(籠の鳥にならず)自由の身でいられる」。鳥を籠に閉じ込めることへの、風変わりな抵抗というわけだ▼飼う人あり、野外で観察する人あり、人間から鳥への愛情の表し方は様々だ。とはいえ歪(ゆが)んだ愛情では話にならない。「野の鳥は野に」。野鳥研究で知られた文化人、中西悟堂の残した言葉が、ふと胸をよぎっていく。

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