HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 15 Jul 2011 00:06:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ししくしろ。不思議な響きの言葉だが、実は山などにかかる<あ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年7月15日

 ししくしろ。不思議な響きの言葉だが、実は山などにかかる<あしひきの>や、天(あま)、光などにかかる<ひさかたの>などと同じ枕詞(まくらことば)の一つ▼こんな現代短歌がある。<ししくしろとふ舌のしびるる枕詞美(うま)しにかかる黄泉(よみ)にもかかる>日高堯子(たかこ)。ししくしろとは肉串(ししくし)ろ、つまり肉の串焼きで、それが美味、うまし、というわけで「熟睡(うまい)」や、良味(よみ)と音が通じる「黄泉」にもかかる▼その美味なる肉が放射能汚染され、消費者の元にまで流通していたというのだから、胸が塞(ふさ)ぐ。福島県南相馬市の畜産農家が出荷した肉牛から基準を超える放射性セシウムが検出された問題。検査されないまま出荷された食肉は、八都道府県で四百キロ以上消費された可能性があるという▼専門家によれば「健康に影響が出るような値ではない」とのことだが、検査は是非にも遺漏がないようにしなくてはいけない。「流通しているものは安全」という土台が崩れるようなことになれば影響は計り知れない▼もとより、この件も原発事故がなければ起き得ないこと。事故で原乳が出荷停止になり、乳牛も手放した後、自ら命を絶った同県相馬市の酪農家のことを思い出す。その男性が壁にチョークで書いた“遺書”の一文はまさに<たまきはる>命の悲痛な叫び▼<原発さえなければと思います>。一体、どれだけの人が同じ無念をかみしめていよう。

 

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