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パート労働者や自営業者らが加入する国民年金の保険料納付率が2010年度、59・3%に落ち込んだ。保険料を2年以上、一度も払っていない「未納者」や、そもそも制度に加入して[記事全文]
サッカーの女子ワールドカップ(W杯)で、日本代表チームなでしこジャパンがスウェーデンを破り、決勝に勝ち進んだ。これまで世界レベルの大会では、2008年北京五輪の4位が最[記事全文]
パート労働者や自営業者らが加入する国民年金の保険料納付率が2010年度、59・3%に落ち込んだ。
保険料を2年以上、一度も払っていない「未納者」や、そもそも制度に加入していない人が330万人いる。
サラリーマンを含む公的年金の加入対象者全体でみると約5%とはいえ、無年金や低年金の人が増えるのは、年金制度や社会の安定にとってマイナスだ。
未納や未加入は、その当人にとっても大きな損である。なぜなら国民年金の半分は国が補助しているからだ。その額は年間10兆円。年金を受け取る権利を確保しておかないと、みすみす補助分をもらい損ねてしまう。
「国庫負担」と呼ばれる制度だが、厚生労働省の調査では6割以上の人は、国が年金を補助しているのを知らなかった。
国の補助といっても、その出どころは私たちが払う税金だ。
先月末、政府・与党は「2010年代半ばまでに、消費税を5%幅引き上げる」という案を決めた。このうち1%分の2兆7千億円は、この国庫負担をきちんと賄うために使う。
年をとって無年金になっても、日々の生活で消費税は払わざるを得ない。ところが、そのお金は他人の年金に回ってしまう。これではもったいない。
こんな事態に陥らないために、どうしたらよいか。
国民年金の保険料は月1万5千円。フリーターやパート労働者にとって安くはない。何十年も先の年金より、今の生活が大事だと考えてもおかしくない。
だが、所得が低い場合、保険料が減免される制度がある。実際、全額が免除されている人は、国民年金加入者の2割近い350万人もいる。この人たちは、国が補助する分だけの年金は受け取る権利を得ている。
生活保護の受給者は自動的に免除されるが、その他は申請が必要だ。それもおっくうという人がいる。日本年金機構は所得を調べ、全額免除になりそうな人に申請を勧めたが、約70万人の人が応じなかったという。最低限、必要な知識が行き渡っていないのが現実だ。
未納や未加入の人はきちんと申請してほしい。
制度面での切り札は、パートやアルバイトを厚生年金に入れることだ。かつては自営業者が多かった国民年金だが、今や4割は勤め人である。雇用主が保険料を天引きする厚生年金なら原則、未納は生じない。
これも「一体改革」に盛られた施策である。早急に実現を図るべきだ。
サッカーの女子ワールドカップ(W杯)で、日本代表チームなでしこジャパンがスウェーデンを破り、決勝に勝ち進んだ。
これまで世界レベルの大会では、2008年北京五輪の4位が最高だった。その壁を乗り越える快挙だ。
技術の高さが際だつ。スウェーデンとは平均身長の差が10センチあった。国際舞台では常に背負う体格差を、献身的な運動量と持ち味のパスワーク、俊敏性、組織力でカバーした。先制点を許しても落ち着いた試合運びで、勝利を手繰り寄せた。
女子の代表チームが初めて編成されたのは1981年のことだ。マイナースポーツとしての長い苦難の末、30年という節目に花が開いた。
追い風が吹いたこともあった。89年に始まった日本女子リーグには、バブル景気を背景に企業チームが次々に参入し、海外の有力選手を集めて隆盛を誇った。しかし、バブルが崩壊すると、多くのチームはリストラ対象となり、90年代終盤には廃部や解散が相次いだ。
福島第一原発の事故の影響で東京電力チームの活動が休止となり、代表を含む多くの選手が移籍先探しを余儀なくされた。
世界の頂点を狙う現在でも、選手たちの待遇は決して恵まれているとはいえない。
海外のプロリーグで活躍する選手を除けば、代表クラスでも、月給20万円程度の契約社員ならいい方という。仕事やアルバイトをしながらサッカーに取り組む選手がほとんどだ。
男女が一緒にプレーする小学校でサッカーの魅力を知った女子が中学に上がると、男子のみの部活に参加できず、プレーする場に困ることもまだ多い。
代表選手たちは、ボールをける喜びや周囲への感謝を最初に口にする。「結果を出すことで女子サッカーの環境を変えたい」との思いが共通するのだ。
こうした厳しい競技環境を乗り越えて、なでしこたちのひたむきさはある。
女子サッカーの人気は世界的に高まっている。日本でも、なでしこの活躍で認知度は大きく上がった。選手を取り巻く環境の向上につながって欲しい。
地元ドイツと対戦した準々決勝の前に、選手たちは大震災の映像を見て、自らを奮いたたせたという。試合後のピッチでは真っ先に横断幕を広げる。
「世界中の友人のみなさんへ。支援をありがとう」
ドイツで躍動するなでしこたちのメッセージを受けとめたい。そしてこの勢いで、頂点を極めてもらいたい。