最高検は検察改革で、弁護士らを参与として新設の監察部門に入れると発表した。特捜部の軸足が独自捜査から脱税などの経済事件にも移る。検事は地道な捜査を積み上げるしか再生の道はない。
特捜検察は捜査権限と起訴権限の二つを持つ。その強大な権限ゆえに、いったん暴走し始めれば、歯止めが利かない。厚生労働省の元局長を被告人にでっち上げた大阪地検の郵便不正事件では、検事による証拠改ざんの事実が、それを雄弁に物語る。
今月上旬に最高検が発表した検察改革は、こうした不祥事の再発防止のためだ。
特捜部の独自捜査部門を縮小することなどが柱だが、最高検内に監察指導部が新設されることも注目される。検事らのほかに元判事と弁護士が「参与」として加わる。取り調べで供述を強要していないか、証拠隠しや改ざんがないかを点検し、問題があれば指導する。内部通報も受け付ける。
被疑者の弁護士から不当な取り調べなどの情報提供があれば、調査するともいう。そうした監察部門に参与という「外部の目」が入る意義は小さくない。
閉鎖的な検察の体質に風穴をあける可能性を秘めるが、民間人の参与に果たしてどれだけの情報が与えられるかは未知数だ。秘密主義を貫けば、“お飾り”にすぎなくなり、改革は意味をなさない。「外部の目」は検察官と対等な立場で、不正情報にアクセスできることが不可欠といえよう。
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる元秘書らの公判では、東京地裁が供述調書の多くを証拠採用しなかった。取り調べの段階で「検事による威圧、誘導があった」と裁判官が判断したためだ。
特捜部の暴走を食い止めるのは、裁判官の役目でもある。これまで検察官の調書は信頼性が高いと思い込んでいた裁判官は、認識を改めた方がよい。
特捜部の独自捜査部門は縮小される一方、国税局や証券取引等監視委員会などからの告発を処理する財政・経済部門が強化される。こうした告発案件を着実にこなすことがまず必要だ。金融などに詳しい外部有識者の委員会も設けられる。専門的な捜査を担う基礎体力も養う必要がある。
特捜部で独自事件を手掛けることは出世への階段でもあった。それが背伸びをした捜査に走らせる傾向を招いたのだとすれば、人事評価にも新基準がいる。
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