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定期検査を終えた原発の再稼働をどう進めるか。すったもんだの末、新しく設けるストレステスト(耐性評価)を、その基準とすることが決まった。拙速にこの夏の運転再開へ動いた海江[記事全文]
国境を越えた結婚が破綻(はたん)し、一方の親が無断で子どもを連れて出国した場合、子を元の居住国に戻し、面倒を見る者をその地の手続きに従って決める。国家間でそんな約束を取[記事全文]
定期検査を終えた原発の再稼働をどう進めるか。すったもんだの末、新しく設けるストレステスト(耐性評価)を、その基準とすることが決まった。
拙速にこの夏の運転再開へ動いた海江田万里経済産業相も問題だが、行き当たりばったりで政策を変えて混乱を招いた菅直人首相の責任もきわめて重い。
政府は、電力の安定供給と脱・原発依存を両立させるという難しい問題に直面している。原子力行政で自ら不信を買うような行為を重ねることは、二度と許されない。
新基準となるストレステストは、どの程度の地震や津波に耐えられるか、その余裕度をコンピューターで計算して確認する。設計時に一律に課される安全基準とは異なり、経過年数や地質構造など、それぞれの原発固有の条件を反映させる。
「安全性」の範囲も、多岐にわたる。政府が参考にする欧州では、航空機の墜落やミサイル攻撃なども評価の対象だ。
具体的なテスト項目など、細部の設計はこれからだが、震災後の安全検査が名ばかりだったことを考えると、一歩前進に違いない。
福島の事故を受けて、経産省の原子力安全・保安院が各電力会社に緊急対策を実施させた後の「安全宣言」では、評価の対象は短期的な措置に限られていた。周辺自治体を含む地元の意見も十分に取り込んだ項目づくりを急いでほしい。
もっとも、ストレステストは、あくまで「計算」だ。式にあてはめる数値いかんで、結果はいかようにも変わる。
また、ストレステストの本来の目的は、原発ごとに脆弱(ぜいじゃく)な部分を徹底的に洗い出すことであり、再開を前提とした試験でもない。テスト結果を確認する保安院が「はじめに合格ありき」の姿勢のままならば、同じことの繰り返しになる。
政府は、テスト項目や結果の評価に原子力安全委員会を関与させることで客観性を保つ方針だ。しかし、安全委自体、福島の事故で期待された役割を果たしておらず、国民の厳しい視線を浴びている。
地震やシステム工学といった原子力以外の専門家を含め、第三者が検証できるよう、できるだけ情報を公開することが望ましい。テロ対策などの安全保障上、難しい面もあるが、「原子力村」に委ねてきた安全チェックの態勢を変えるときだ。
同時に、国民の信頼を取り戻すには、保安院の独立を軸とした規制・監視当局の再編・強化を急がなければならない。
国境を越えた結婚が破綻(はたん)し、一方の親が無断で子どもを連れて出国した場合、子を元の居住国に戻し、面倒を見る者をその地の手続きに従って決める。
国家間でそんな約束を取り交わすハーグ条約への加盟に向けて、国内法を整える作業が法制審議会などで始まる。
政府は5月の閣議で加盟方針を打ち出した。問題は、元の国に送り返すことが子の福祉に反する時だ。例えば、夫の暴力や迫害から逃れるため日本人の妻が子と一緒に帰国した。そんな状況でも返還すべきか。
政府は閣議了解の際、子が夫から暴力を受けた▽子の心に著しい傷を残すような暴力を、夫が妻にふるった▽経済的事情などから妻が子に同行できず、現地で子の世話をする適当な人がいない――などの場合は返還を拒否できると、法律に盛り込むことを確認した。
「条約を骨抜きにする」との批判も出ているというが、これらの要件は加盟国のこれまでの裁判例を参考にまとめられたものだ。誤解が広がって国際的な信用を失わないよう、政府は丁寧に説明する必要がある。
こうした拒否理由があるか否かは、日本の家庭裁判所で審理する方向だ。外国での暴力を証明するにはどんな証拠があればいいのか。「著しい」とはどの程度か。具体的な事例を考えながら議論を深めなければならない。その積み重ねが裁判所の判断を安定させるとともに、国民の理解につながる。
もうひとつの大きな課題は、返還手続きの核となる「中央当局」のあり方だ。子を捜し出して保護する、紛争解決のため関係者に情報提供や助言を行う、子を相手国に安全に送り届けるなどの義務を負う。
どれも簡単な話ではない。子を捜すため顔写真をネット掲載する国もあるが、日本では受け入れられないだろう。公的機関がもつどんな権限や情報を用いるのか。警察の力も使うのか。
中央当局となる外務省は、様々な現場で家族間の争いに取り組む専門家の経験や国民の声を聞いて、仕事の内容を慎重に詰める必要がある。加盟国の義務は果たさねばならないが、運用イメージを社会全体で共有し、広範な理解に支えられなければ実務は円滑に回らない。
日本に住んでいた子が国外に連れ去られ、日本側が返還を求めるケースもある。子を思う気持ちに、父か母かの性別による差はない。特定の立場や視点にかたよることなく、子どもの幸せを第一に、しっかり機能する仕組みを作り上げたい。