世界貿易機関(WTO)が中国のレアメタル(希少金属)の輸出制限を違反と認定した。中国に揺さぶられては日本のハイテク製品が危うくなる。日本も輸出制限をやめるよう中国に迫るべきだ。
WTOがマンガンなど中国の希少金属の輸出制限を協定違反と断じたことで、欧米各国が提訴を検討しているレアアース(希土類)の輸出制限にも影響を与える可能性が大きくなった。
今や中国は米国を抜いて日本最大の貿易相手国だ。日本は紛れもない当事者であり、提訴国に名を連ねて中国に自由貿易の基本原則を逸脱せぬよう要求すべきだ。欧米に丸投げし、第三者を装ってはならない。
中国は二十一世紀に入り、輸出削減と輸出税増税で鉱物資源を国内で囲い込む政策に転じた。希土類の日本向け輸出はピークの年六万トンが三万トンに半減し、ネオジムの価格はこの一年間で八倍に、ジスプロシウムは五倍に急騰した。
希土類は鉄などに混ぜて磁力を強めるネオジムや耐熱性を強化するジスプロシウムなど十七種類の元素の総称で、電気自動車や風力発電のモーターなどハイテク製品に欠かせない。中国は世界最大の生産国で、日本は使用量の八割を中国からの輸入に頼っている。
中国がWTO認定を承諾すれば輸出制限は和らぐだろうが、中国は輸出制限以外でも希土類の国内価格を格安にしたり、海外から鉄などを持ち込み希土類を使った中間財を中国企業に生産委託して国外に持ち出すことを禁じている。
資源を武器に海外企業を中国に進出せざるを得ない状況に追い込み、先端技術を獲得することが狙いだ。ハイブリッド車向け磁石合金の技術流出を警戒していた昭和電工も進出を余儀なくされた。
原油のほとんどを中東に依存する日本は二度の石油危機でその怖さを思い知らされた。これを教訓とすれば、希土類の調達先を中国以外にも広げねばならない。
現在、商社の豊田通商、双日がインドやベトナム、オーストラリアなどで希土類の権益確保を進めている。東京大学の研究チームは、太平洋の海底に陸地の八百倍もの希土類が眠っていることを突き止めた。資源化を果たすまでには長い時間を要するが、日本が純輸入国から産出国に転じる可能性を秘めている。
調達先を広げて過度の中国頼みから脱していく。それこそが、ハイテク分野で経済成長を目指す日本の選択すべき道だ。
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