HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 08 Jul 2011 02:06:49 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:やらせメール 信頼の根幹が揺らいだ:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

やらせメール 信頼の根幹が揺らいだ

2011年7月8日

 なりふり構わずとは、このことだ。民意を“捏造(ねつぞう)”しようとは。原発を動かすためには、何をやっても許されるとでも思っているのか。九州電力だけでなく、原発全体への疑念すら湧いてくる。

 定期検査で停止している九州電力玄海原発2、3号機(佐賀県玄海町)の運転再開に向けて先月末、経済産業省が佐賀県内で、県民向けの説明会を開催した。

 説明会といっても、聴衆なし。政府から委託された地元広告代理店が選んだ主婦や農業者ら七人が、経産省原子力安全・保安院などから、ほぼ一方的に安全性を宣伝されただけだった。

 その模様はケーブルテレビやネットで中継されたが、質問は一回一分、回答は二分に限られ、参加者からも「専門用語ばかりでついていけなかった」と不評を買った。「密室聴聞会」との批判も出た。県民参加の趣旨からはほど遠い。その上、再稼働賛成メールの捏造とは。「もう何を信じていいのか分からない」と嘆くのは、佐賀県民だけではないはずだ。

 トップの辞任を招いたトラブルやデータ隠し…。電力会社の隠蔽(いんぺい)体質はさまざまな場面で指摘されていた。だが住民の声の捏造とは、それにも増して罪深い。

 玄海原発の再稼働をめぐっては、いったん、安全と認めた政府が、唐突にストレステスト(耐性試験)を実施すると表明し、首相と経産相の足並みの乱れがあらわになった。再稼働に動き始めていた地元玄海町長は迷走する政府にいら立って、再稼働容認を撤回し、佐賀県知事は判断を先送りした。住民、国民の不信は募るばかりだ。

 保安院の検査に通れば、法律上再稼働は可能である。地元知事や首長の同意を得るのは、紳士協定に基づくもので、法的拘束力はない。とはいえ、地元同意はもはや、住民が勝ち取った成果と言っていい。地域の安全の根幹にかかわる決めごとだ。それをあっさり踏みにじられた。国民が不安に思うのは、そのためだ。

 しかも、福島第一原発の危機はなお、続いている。原発や電力会社、そして政府に対する国民の不信と不安は、極限に近い。

 権威と力を過信し、民意を軽く見ようとするなら、原発の再稼働はおろか、地域分散、自然エネルギーへと進むべき、この国のエネルギー政策自体が立ちゆかない。民意不在の電力会社、そして混乱する政府双方に、あらためて猛省を促したい。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo