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2011年7月7日(木)付

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原発のテスト―福島後の厳しさが要る

全国の原発で、新たに安全性評価(ストレステスト)をすることが決まった。いま、原発が安全かどうかを判定するには、福島第一原発の経験を踏まえた検証が必須だ。最初から、合格させるための手続きであっ[記事全文]

米軍新型機―不実な導入に異議あり

米政府は先月、米海兵隊の新型輸送機オスプレイを24機、来年10月から沖縄県の普天間飛行場に配備していく計画を明らかにした。これを受けて、日本政府もやっと重い口を開き、地元自治体に正式に伝えた[記事全文]

原発のテスト―福島後の厳しさが要る

 全国の原発で、新たに安全性評価(ストレステスト)をすることが決まった。いま、原発が安全かどうかを判定するには、福島第一原発の経験を踏まえた検証が必須だ。最初から、合格させるための手続きであってはならない。

 テストの実施は海江田万里経済産業相が発表した。テストを経て、真夏の電力需要がピークになる前に点検中の九州電力玄海原発2、3号機などを何とか再稼働したい思いのようだ。

 だが、福島の事故を受けて欧州連合(EU)が始めたテストは、地震や津波などの自然災害から、テロによる航空機衝突までを想定する厳しいものだ。そういうとき、原子炉を安全に冷却停止できるかを調べている。

 日本でも、客観的な安全性を高めるために導入するのならば賛成だ。むろん、本格的に取り組むには今夏に間に合わない。大事なのは信頼される安全の担保をどう得るかだ。

 テストはおもにコンピューターによる計算で進める。全体として想定の災害にどれくらい耐えられるか余裕度を測る。原発施設や地質構造をどう適切に数値化するか、与える衝撃の想定が妥当かといった条件が重要になる。テストする主体は電力会社だという。データの多くは電力会社が握っているからだ。

 福島事故の後、原子力安全・保安院は国内全原発に緊急対策を指示した。だが、それぞれの原発ごとに古さや立地条件の差があるのに、どれも早々に「安全」としたことが、むしろ周辺の住民の不信をつのらせた。

 新しいテストは結論だけでなく、使った仮定や経過もすべて公開して外部の目にさらす必要がある。さらに「安全」とみなす余裕度の最低水準をどう線引きするか。水準に達しないと判定された原発をどうするか。合理的な根拠と併せて説明しなければならない。

 「どうしたら信頼されるか」を政府は真剣に考えなければならない。そのためには「誰が監督するか」が大事になる。原発を進めてきた経産省にある保安院ではなく、独立性と専門性があり、安全に徹する規制監督の主体を急ぎ、作る必要がある。

 EUのテストは、最終段階で他国の専門家集団の検証も受ける。身内に甘い結果にならないようにするためだという。

 電力不足による社会の混乱を防ぐために、安全とみなせる原発を当面再稼働することが必要になってくる。そのために、住民からも、日本の対応に注目している国際社会からも信頼されるテストにする必要がある。

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米軍新型機―不実な導入に異議あり

 米政府は先月、米海兵隊の新型輸送機オスプレイを24機、来年10月から沖縄県の普天間飛行場に配備していく計画を明らかにした。これを受けて、日本政府もやっと重い口を開き、地元自治体に正式に伝えた。

 オスプレイはヘリコプターのような上下動も、飛行機のような高速の水平飛行もできる。現在の輸送ヘリに比べて速度は2倍、エンジン出力は3倍あり、航続距離は4倍に延びる。

 これほどの高性能機が導入されたら、普天間飛行場は返還されるどころか、将来も固定化されてしまうのではないか。

 こんな疑念が膨らみ、沖縄側は導入を受け入れる環境にはない。仲井真弘多知事は政府に反対を訴え、飛行場のある宜野湾市などでは抗議集会や撤回を求める決議が相次いでいる。

 根っこには、導入をひた隠しにしてきた日本政府の不実な対応への強い不信感がある。

 米側が1996年、普天間返還を盛り込んだ日米特別行動委員会(SACO)の文書案に、オスプレイの機種名を書き込もうとした際に、日本側の要請で削除されたことが公開された公文書で判明している。

 さらに民主党に政権交代したあとも、「正式な通告がない」という態度を続けてきた。

 これほど露骨に沖縄県民や国内の世論をないがしろにして、結果として欺いてきたことが信じられない。

 安全性や騒音への懸念も大きい。開発段階で4度、墜落し、30人が犠牲になっている。米軍の正式導入後も、アフガニスタンで墜落した。騒音も「より静かになる」という日米両政府の説明には疑問符がつく。

 それでも日本政府は「単なる機種の更新」であり、拒否する法的な権限はないという。それに同機以外の選択肢も見あたらないという見解だ。

 だが、本当にそうなのか。

 たとえば、仲井真知事はオスプレイの航続距離の長さに着目し「県外でも運用できる」と主張している。この見方には一定の説得性がある。

 民主党政権は普天間から九州への訓練移転を探ったが、現有ヘリの航続距離の短さが一因で頓挫した経緯があるからだ。

 先の日米協議で、普天間の移設完了目標2014年の先送りを決めた。それだけに新型機を導入する前に、政府は訓練の県外移転の可能性や別の選択肢の有無などを、米側と改めて協議すべきだ。

 そうした姿勢こそが沖縄の信頼を回復する道につながる。導入をごり押ししてはいけない。

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