HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 30044 Content-Type: text/html ETag: "928cbb-6292-d62dd3c0" Cache-Control: max-age=4 Expires: Wed, 06 Jul 2011 02:21:06 GMT Date: Wed, 06 Jul 2011 02:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
放射線への不安が被災地から離れた場所にも広がっている。東京など首都圏でも、個人や市区町村が公園や通学路、給食の食材など、身の回りの線量を測っている。原発事故の現場に近い[記事全文]
おしゃれなカフェやレストラン、個性を競うブティックが軒を連ねる上海の新天地は、中国を代表する繁華街の一つだ。中国共産党は今から90年前の7月、ここで初の大会を秘密裏に開[記事全文]
放射線への不安が被災地から離れた場所にも広がっている。東京など首都圏でも、個人や市区町村が公園や通学路、給食の食材など、身の回りの線量を測っている。
原発事故の現場に近い福島県とは切迫感に差がある。だが、一時的にせよ東京では水道水で、遠い静岡でも製茶で、放射性物質が基準を超えていた。日々発表される数字は常に過去のものであり、いま自分のまわりでどうなのかはわからない。不安を感ずるのも無理はない。
まずは、わかりやすくきめ細かな情報を提供したい。
原発事故から3カ月余り。市民が放射線の情報を理解して判断する力は上がっている。行政が単に「安心して」と広報して納得できた時代ではもうない。
とくに、幼い子を持つ親世代の不安にどう応えるか。重要かつ難しい課題である。
たとえば、厚生労働省が「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さん」向けに出したパンフレットは「水道水は安全です」「外で遊ばせても心配しすぎる必要はありません」と簡潔にし、あえて具体的な根拠や数値を入れなかった。すると「かえって不安になる」と、親たちからの批判にさらされた。
身近な市区町村や学校は、住民に理解と納得をしてもらううえで大きな役割を担う。砂場の砂に不安を覚える人がいれば、一緒に線量を測り、説明する。安全かどうか、見解が分かれる値なら、話し合って砂を入れ替えることもあってよい。
低線量の放射線の危険は、わからないことが多く、受け止め方は人によって違う。子どもは大人より放射線の影響を受けやすいから、親世代は心配する。
「子どものためなら、徹底的に安全策をとりたい」と考える人がいる。食材が心配で学校の給食を食べさせたくないから弁当を持たせる、野外活動が心配だから休ませる――。逆に「気にしすぎて野菜不足や運動不足になるほうが、子どもの成長に悪い」と考える人もいる。
どこまで心配し、安全策をとるか。個人の価値観で判断が分かれるところが出てくる。
鋭敏になっている子育て世代に上の世代が「心配しすぎだ」といっても、やすらげない。考え方の違いがあれば、互いの選択肢を封じることなく尊重し、語りあえる関係を守りたい。
子どもの健やかな成長はだれもが望んでいる。放射線リスクの受け止め方の違いで社会に亀裂を生じさせ、原発事故の被害がさらに広がらないよう、子育て世代の不安を受け止めたい。
おしゃれなカフェやレストラン、個性を競うブティックが軒を連ねる上海の新天地は、中国を代表する繁華街の一つだ。
中国共産党は今から90年前の7月、ここで初の大会を秘密裏に開いた。当時の党員は50人余りとされ、十数人が参加した。
1949年の建国までの、苦難の連続。その後の大混乱。内戦や抗日戦、権力闘争、そして飢餓により、おびただしい人命が失われた。党の歴史上、汚点となった事件も少なくない。
しかし、中国はこの30年、高成長を続け世界第2の経済大国になった。旧ソ連や東欧の社会主義国が立ち行かなくなったのとは違い、大胆に改革開放政策を採用し、市場経済を導入した党の役割は特筆すべきだろう。
発展の勢いに乗って、五輪や万博も成功させた。7月1日の結党記念日を前に、北京―上海間1318キロを5時間足らずで結ぶ高速鉄道も営業を始める。
しかし、8千万人を超えた党員のすべてがお祭り気分でいるわけではない。そして多くの市民はむしろ、さめている。
労働者や農民の側に立ち、各民族の利益を代表し、人民に奉仕するのが結党の理念だった。だが、現実はそうではない。
改革開放は沿海部から始まり富裕層が生まれた。党の権威を背にした国有企業の経営者や、党との関係を使って商機を広げた民間経営者は巨万の富を得た。彼らの子供は「富二代」と呼ばれ、七光りで豊かになる。党官僚は権力をカネに換える。
しかし、多数はそんな世界とは無縁だ。ささやかな豊かさを時に感じつつも、絶望的な不公平感を抑えることはできない。
賃上げや土地収用をめぐり当局から弾圧を受けているのは、主人公であるべき農民や労働者だ。こんな矛盾をつくるために党があるわけではあるまい。
農民らは党を打倒するつもりはなく、小さな権利の保障を願っているのだ。だが、今の事態を放置すれば体制を脅かすことにもなりかねない。
社会のゆがみの原因は、政治体制の改革に本腰を入れてこなかったため、党をチェックする仕組みが弱いことだ。党員の犯罪はまず党機関が捜査し、司法にゆだねるかどうかを決める。第三者の目は届かない。
やはり複数政党制が望ましいのだが、党がそこに踏み込むことは近い将来なかろう。ならば非党員を司法、警察、治安部門で大胆に起用してはどうか。党の権威が冒されるという反発が予想されるが、社会の安定を保つには必要だろう。世界最大の党の度量に期待したい。