HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 04 Jul 2011 01:06:52 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:小笠原の自然 生態系の箱舟を後世に:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

小笠原の自然 生態系の箱舟を後世に

2011年7月4日

 小笠原諸島が世界自然遺産に登録されたのは、豊かな生態系が評価された結果だ。独自の進化を遂げた固有種が数多く、貴重な動植物の箱舟でもある。壊れやすい生態系を後世まで守り続けたい。

 「東洋のガラパゴス」と呼ばれる小笠原諸島は、東京から一千キロ以上も離れた、父島や母島など約三十の島々から成る。

 一度も陸続きになっておらず、隔絶された海洋島なので、多種多様な生物が独自の進化を遂げた。

 その結果、他の土地で見られない固有種が多く生息している。

 カタマイマイなど陸産貝類の94%、植物の36%、昆虫の27%が小笠原独自のものである。オガサワラオオコウモリも固有種だ。クロアシアホウドリなど、国際的に絶滅が危惧される野生生物も五十七種類にのぼっている。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は「進化の過程の貴重な証拠を提供している」と認めた。島々の美しい風景も大きな魅力の一つだ。地元の人々とともに同遺産登録を喜びたい。

 同時に豊かな自然を今後も守り続けねばならない義務も背負ったといえる。特異な生態系は、一八三〇年に人間の入植によって破壊されてきた歴史もある。固有種を危機に追いやる野ヤギやトカゲの仲間であるグリーンアノールなどは、もともと人間が持ち込んだものだ。それらの排除や、新しい外来種に対する防御の対策は徹底してもらいたい。

 本土との定期船は約六日に一回だけだが、今後は大型客船の来港などで観光客の増加が予想される。地元では経済効果を期待するが、それが環境悪化を招いてはならないのは当然だ。

 鹿児島県の屋久島では世界遺産に登録されてから、縄文杉を訪れる人が一日約一千人にものぼることもあり、自然への影響が問題視された。観光客の立ち入りの制限案が検討されたほどだ。

 小笠原諸島には自然保護と観光を両立させるエコツーリズムの先進地として歩んでほしい。既に南島などではガイドが同行し、決められたルートを歩くルールがある。観光客も自然を守る気持ちを大事にしてほしい。

 世界遺産の南米エクアドルのガラパゴス諸島は、観光客の増加と外来種の侵入に悩まされ、緊急の環境保全が必要な「危機遺産」にリストアップされたこともある。生態系を守る難しさは「東洋のガラパゴス」でも試される。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo