菅直人首相が政務三役人事を行った。新設の復興対策担当相に松本龍防災担当相を充て、原発事故担当相も新設したが、政権の手詰まり感は否めない。復興を強力に推進する態勢には程遠い。
小幅にとどまった今回の“内閣改造”では、松本復興担当相のほか新設した原発担当相に、これまでも原発事故対応を担っていた細野豪志首相補佐官を起用した。
東日本大震災や福島第一原発事故対応に一定のめどがつくまでは辞任に抵抗する姿勢を示す首相の思いが表れた形ではある。
松本氏起用について首相は記者会見で「震災発生から最前線で指揮を執り、復旧から復興への継続性から適任」と説明した。
しかし、首相は復興担当相に浮上した仙谷由人官房副長官や玄葉光一郎国家戦略担当相と退陣時期をめぐり対立し、松本氏以外に引き受け手がなかったのが実情だ。
その松本氏も首相からの就任打診を一度断っており、首相の退陣時期でも「六月いっぱいというのが私の中にはある」と、早期辞任を促す考えを示していた。どうも気乗りがしない就任のようだ。
国民新党の亀井静香代表も首相補佐官就任は受け入れたが、副総理は固辞した。首相の求心力低下をうかがわせる態勢で、復興を全力で進めることができるのか。
さらに首相は自民党に離党届を提出した浜田和幸参院議員を総務政務官に起用した。野党側から人材を積極的に登用することで、与党が参院で過半数に達しない「ねじれ国会」の打開に道筋を付ける狙いが首相側にあるのだろう。
ねじれ国会では野党も国政運営の責任の一端を担う。復興基本法は民主、自民、公明三党による政策調整を経て成立しており、三党の政策担当者間では協力態勢や信頼関係ができつつあるようだ。
その中での自民党議員の「一本釣り」は協力機運に水を差し、復興推進に悪影響を与える禁じ手ではないのか。自民党が反発するのはもちろんだろうが、国会運営への影響を懸念する民主党内から異論が出るのも当然である。
閣僚を三人増やす内閣法改正案が成立しておらず、細野氏の閣僚起用に伴って、蓮舫行政刷新担当相が首相補佐官に格下げされた。
行政刷新自体は枝野幸男官房長官が引き続き担当するが、民主党の看板政策だった行政の大胆な見直しによる財源捻出が、震災復興に向けた「増税大合唱」の中で、葬り去られたと思えてならない。
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