動物たちが生き生きと動き回る「行動展示」で注目された旭山動物園(北海道旭川市)の前園長小菅正夫さんは、小学校にインターネットを普及させる動きを批判してきた。ネットから知識を得て分かったつもりになることは、子どもにとって不幸と考えているからだ▼ネットは、「分かったこと」しか分からないのに、「分からないことがない」と勘違いをしてしまう。「それが子供たちにとっていちばん危険なことです」(『生きる意味って何だろう?』)▼自分の手でカエルを捕まえれば、肌触りや生息場所を身をもって知ることができる。「両生類。棲(す)んでいるところは…」とネットの検索だけで済ますなら、何も分かっていないのと同じことだという▼「カエルとはどんな生き物なんだろう?」。その答えは自分で見つけなければならない。自然の中で動物や虫を見て疑問を持つこともなく、ネットに頼る子どもには「絶対に科学者の芽は育たない」と小菅さんは言い切る▼子どもたちが泥だらけになり、カエルや虫を追い掛けることができない地域が今広がっている。放射能汚染が続く限り、福島の親御さんたちは、田んぼで子どもにカエルを探させる気にはならないだろう▼虫や動物との出合いを奪われた子どもたちがたくさんいる。原発事故は、放射性物質だけでなく、どれほど多くの災いをまき散らすのか。